技術マニュアルの作成
技術マニュアル作りでは、本文の他に3つの要素がある。「数式」と「表」と「図」である。
この3つはどれもたいてい本文より時間がかかる。
数式は分数やら特殊な文字が多い、たとえば小文字のbに下付で大文字のAが付いているようなときは、小文字のbのサイスを1つ上げて大文字のAを2つ下げる必要がある。またギリシャ文字や特殊記号もよく使われる。3段の分数をカッコでくくることもある。
数式では美しく読みやすいフォントを使うことが大切だが、技術マニュアルでは私はTimesを使うことが多い。アルファベットなどはイタリックで数字と演算記号はノーマル。ただし数式中のいくつかの文字は2バイト文字が必要なのでそこはヒラギノ明朝を使う。全部ヒラギノ明朝という選択肢もあるが、アルファベットと数字はTimesの方が美しい。
さて、長い数式は1つ作るのにIndesignで20分くらいかかるものもある。今回のマニュアルは数式が多いので非常に時間がかかった。
次に表。これも時間がかかる。ただし表組はIllustratorに比べIndesignでは格段に作りやすい。制作にかかる時間も半分以下で済む。特に変更作業はものによっては10分の1くらいの時間で対応可能になった
そこで、書き出したエクセルの必要範囲を均等セル幅のエクセルの別シートにコピペする。
これら一連の作業が自動でうまくいったら楽なのだが、なかなかそうはならず、手作業が減らない。そうね、デフォルト変換に点数をつけるとPDFからエクセルへの書き出しは60〜70点、エクセルからIndesignは80〜90点くらいかな。元の表のPDFがラスター、つまりテキストが画像の場合はPDFでOCRをかけてエクセルに持って行くか、画像化してエクセルでOCRにかけるのだが、画像解像度をいくら上げても正しい変換は期待できない。点数は30点以下だ。もし元データにこういうラスターの表の数が多い場合にはもう少し優秀なOCRソフトを使い一手間かけたルーチンにするが、通常は表の文字は生きているので、上記の方法でうまくいく。残ったわずかなラスターの表はマイクロソフトやアドビのできの悪いOCRは使わず、1から自分で打ち直す。
illustratorで作ったガラスの球。illustratorでもこの程度の表現はできる。
数式組み版はタグを使って組んだものをラスター変換し、画像として貼り付けるのが書籍製作などでは一般的だ。しかしこの方法だと後から数式の一部を修正する際、元のデータを直して書き出して貼り付け直す必要がある。書き出した画像のサイズの関係から調整も面倒だ。簡単な置換えだとサイズが狂うことがある。もちろんゲラの時点で査読を完璧にこなし、完全原稿ができるのであればそれでも良いが、なかなかそう簡単にはいかない。全てのデータを私一人で作り、InDesignの PDF書き出しを図や表とともにクライアントがチェックするような場合、どこにどんな変更が入るかわからない。なのでIndesignで作った方がいい。そもそも従来のクライアント側の技術者がWordで、というのは印刷所の担当者に工学的センスが全くなく、数式など組ませることができないので画像を貼り付けるしかないわけで、それが一般化したに過ぎない。
次に表。これも時間がかかる。ただし表組はIllustratorに比べIndesignでは格段に作りやすい。制作にかかる時間も半分以下で済む。特に変更作業はものによっては10分の1くらいの時間で対応可能になった
そんなわけで、よく言われるカタログやリーフレット、技術資料などでページ数が多い場合はInDesign、少ない場合はマスターを用意するまでもないのでillustrator、というのはもっともだが、表がある場合はInDesignというのも十分言えるだろう。
ただし楽になったとは言え、元のデータが印刷物またはPDFしかないとそれらを見やすい表にするのはそれなりに時間がかかる。特に決められたページ幅に収める作業が最も時間がかかる。ここは編集者のセンスが問われる部分でもある。
そして技術マニュアルにはその性格上表の数が多い。一冊のマニュアルの表に2週間以上かかることも多い。
通常、元表は紙で支給されるかまたはPDFも多い。PDFでテキストが生きていればラッキーで、一旦PDFからエクセルに書き出し、それをIndesignに流し込むことができる。もちろん小さな表ならこんなことはせずにInDesignで直接数値を打ち込むのも良いが、大きな表は前述のエクセル経由が楽だ。数値の打ち間違いもない。
通常、元表は紙で支給されるかまたはPDFも多い。PDFでテキストが生きていればラッキーで、一旦PDFからエクセルに書き出し、それをIndesignに流し込むことができる。もちろん小さな表ならこんなことはせずにInDesignで直接数値を打ち込むのも良いが、大きな表は前述のエクセル経由が楽だ。数値の打ち間違いもない。
手間がかかるのはエクセルでの調整とIndesignでの調整。PDFがベクターなら文字は生きているので基本エクセルへの変換効率は高い。書き出しにはAcrobatの書き出し>スプレッドシートコマンドを使う。ただしセル構成は大きく崩れる。セルのサイズも元のPDFに合わせてぱっと見はよく見えるが、InDesignへの流し込みで破綻する。
そこで、書き出したエクセルの必要範囲を均等セル幅のエクセルの別シートにコピペする。
そしてその新しいシートの不要な行や幅を削除しながらIndesign への流し込み用エクセルとしてまともな表を組み上げる。
ここで注意点、新しいシートは事前に全セルの書式を「文字列」に変更しておく。エクセルが自動判別で「数値」にしてしまったセルは、「1.0」を「1」に変えてしまい、正しい表にならない。これは大きな問題となる。1.0と1では全く意味が違ってくるからである。文字列にしておけば勝手に表記が変わることはない。
また、文字はテキストが生きているので概ね問題ないが、元データの「かけ算」記号にアルファベットの「X」(エックス)を使っているような場合は修正が必要だ。この文字の間違いの修正はエクセルで行う。
他には上付き文字や下付文字は一旦すべての文字をフォント、サイズとも新しいシートへペーストしたあとですぐに自分で定めたデフォルトフォント、サイズに変更してしまうので上付きなどもリセットされてしまい修正が必要になる。だがこれらはIndesignに持って行ってから行う。
これら一連の作業が自動でうまくいったら楽なのだが、なかなかそうはならず、手作業が減らない。そうね、デフォルト変換に点数をつけるとPDFからエクセルへの書き出しは60〜70点、エクセルからIndesignは80〜90点くらいかな。元の表のPDFがラスター、つまりテキストが画像の場合はPDFでOCRをかけてエクセルに持って行くか、画像化してエクセルでOCRにかけるのだが、画像解像度をいくら上げても正しい変換は期待できない。点数は30点以下だ。もし元データにこういうラスターの表の数が多い場合にはもう少し優秀なOCRソフトを使い一手間かけたルーチンにするが、通常は表の文字は生きているので、上記の方法でうまくいく。残ったわずかなラスターの表はマイクロソフトやアドビのできの悪いOCRは使わず、1から自分で打ち直す。
「図」は4種類に大別される。「写真」「CG」「イラスト」「図面」である。
順に解説しよう。まずは「写真」
写真はクライアントからデジカメ等で撮影したデータで支給されることが多い。クライアントはプロに頼んだり自分や同僚、または支店の誰かの撮影と様々だ。時々私が撮影を依頼されることもある。その場合も撮影を外部委託するか自分で撮影するか選ぶことになる。航空写真などは外部に依頼するしかないが製品写真などは自分で撮影することが多い。一応こちらも写真はプロなので、クライアントが自分たちで撮影した写真よりはよい画像を用意できる。小さなものの撮影なら仕事場に撮影スペースもある。
これは依頼されて私が撮影した治具。長さは60センチくらい。お借りたときかなり錆が出ていたので、クライアントの許可をもらって錆を落とし塗装してから撮影した。そしてこういうことは通常写真屋さんはまずやらない、そのまま撮る。
私ならちょちょいと塗装して撮影できる。もちろん照明や背景を工夫して撮影することは言うまでもない。照明は6灯、背景紙もいろいろ用意してある。
クライアントから送られてきた写真の場合、ほとんどの写真でレタッチが必要だ。画角が傾いている写真も多いし、ホワイトバランスや露出の調整が必要なものも多い。余計なものを消したり、動かしたりといろいろだ。Photoshopで丁寧にレタッチする。
たとえば下の写真、直接製品には関係ないが写真の一部に車が写っている。左側オリジナルは車の位置が悪い。中央分離帯にぶつかっているようにも見える。こういう写真はなんとなく落ち着かない。そこで車を10mほど後退させて右のようにする。これで違和感がなくなる。ただし製品の効果などを実際以上によく見せるようなレタッチは禁物である。仮にクライアントから依頼があったとしてもきちんと説明して「できません」と断ることにしている。
また、これはカラー写真だが、技術マニュアルでは通常モノクロームなので単純にカラーをモノクロ化すると何だかよくわからない写真になることも少なくない。そんな場合はひと手間かけてモノクロ化する必要がある。その方法は別の機会に解説しようと思うが、原理的なことはここ「RAW現像、モノクローム写真」と同じである。
「図」の2つ目は「CG」
CGは写真の代わりとして使われる。まずは写真が撮影できない場所、例えば地面の下や、できあがったら見えなくなるような場所によく使われる。また撮影の許可が下りない、許可をもらうのが面倒といった理由でCGとなることも多い。さらに実物よりCGの方がわかりやすい絵になる場合もCGが選ばれる。例えば一部を半透明にしたりカットモデルのように切り欠いて仕組みや構成の説明など。
CGソフトで作ったストップウォッチ
また、製品とは別に私の得意分野でもあるのだが、架空の街並みのCGを作成しそこに当該製品群がどのように使われているかを説明するCGもある。こういう絵は技術マニュアルにはほとんど使われないが建築・土木系カタログには多い。
この街並みCGは実はなかなか難しいので作れる人は少ない。まずは街を作るので制作するアイテムがとても多い。道路、信号機、街灯、街路樹、ガードレールからビルや橋、さらに車や船、飛行機、建設機械などなど。だが費用は別にしてもこれらは時間をかければ何とかなる。
何より難しいのは掲載するそれぞれの製品の実際の使われ方を理解し、プライオリティに合わせて画面上にバランス良く配置することである。また当たり前だが大きな製品は少し遠くでもよく見えるが小さなものはそうはいかないことなどを考慮して絵をつくることが求められる。またそれらを組み合わせてできあがった街並みが不自然に見えないことも大切だ。
これがけっこう難しい。
私はまずよく知らない製品はその概要を知るところから始める。
それから手描きのスケッチを描く。ライトテーブルを使って何枚もトレースしながら「いい絵」に持っていく。なのでまずは手描きのスケッチが描けないとお話にならない。場合によってはスケッチをクライアントに見せて意見を聞くこともある。そして構図が決まったところで3Dソフトでゴリゴリ作っていく。パースペクティブウィンドウにテンプレートとしてスケッチを貼り付け制作のガイドにする。その際スケッチは見た目は良くても図学上問題のある部分をうまく補正しながらデータ化するのだが、これも意外とむずかしい。
以前こういう街並みCGの作り方を教えてほしいと相談されたことがある。そこで、まずは手描きでスケッチを描くことから、と言ったら、それは苦手なのでスケッチなしで・・・と。うーん、それでは・・・とそれなりにいろいろ教えたがあれから数年経つがもう諦めたかな。手っ取り早く教えてもらってすぐにうまくなる、なんて私には考えられないけどなぁ。
こういう「スイッチ押したら簡単にできる」みたいな考え、そしてそのスイッチの使い方を私にもわかるように私だけに教えてください、みたいな人達って。
違うと思うけどなぁ・・・、と言っても無駄だ。「私には教えられないということですかぁ?」となったりする。困ったものだ。
さてさて、3つ目は「イラスト」
これはCGと同じように仕組みや構成を説明するのによく用いられる。
イラストとCGは使い分けが難しい場合もある。どちらが良いか事前にしっかり検討することで無駄な作業を減らすことが肝要だ。
またCGも見せ方でイラストっぽくできる場合もあれば、逆にイラストもある程度質感を伴ったCGに似た表現が可能な場合もある。
「図」の最後が図面である。図面は基本的にクライアントからAuto-CADなどのCADデータ、またはそれらのPDFとして支給されることがほとんどである。通常のデザイナーはそれをそのまま線の太さと文字サイズくらい微調整し掲載する。いやそれすらもやらずにそのまま載せて、これではダメなら元データをクライアントの方で調整してくれ、などと言う。まあ仕方がない、図面を全く理解できないのだから。下手にいじるとその方が怖い。だがそれではダメである。用途や目的の応じて手を加えたり見やすくわかりやすく作り直すことで良い資料ができる。それが私の仕事のやり方だ。だから図面は内容が理解できないとダメだし、目的に応じてどのような図にするかしっかり決めてイラスト化することも大切だ。以前、ケーソンという土木資材のイラスト化を外注のデザイナーに依頼したことがあったが1週間後に無理です、できません、と言ってきた。図面が全く理解できなかったそうだ。それで可哀想にいろいろな人に相談してどうにもならなくなって断ってきたのだろう。仕方がないので自分で作った。同じような断面図が永遠と何十枚も続く図面集を見ながら、やっぱり無理かぁ、と反省。それ以来この手の仕事は自分ですることに決めている。
ちなみにクライアントにもいろいろあって、親切なクライアントなら掲載する部分をマーキングしさらにコメントを記入してくれたりする。たとえばこの絵を掲載したいけどこういう風にして、と。親切なクライアントだ。、
逆に全図面をどかっと送ってきて「コレ見て作ってね」的なクライアントもいる。それで何十枚もの図面をチェックし、必要な部分を抜き出し、イラスト化することになる。こういう丸投げのようなクライアントに限って、図ができあがると途端に注文が増える、あーだこーだが続く。で、せっせと訂正する。ようやくできたかなというところで、やっぱり別の図で・・・と言い出したりする。こういうクライアントはいつも同じで正直少々うんざりすることもあるが、かといってこちらもテキトーとはいかないのがつらいところ。
ま、いろいろと書いたが、結局のところこちらがどれだけ理解しているかで成果品もやり方も大きく異なってくる、という当たり前と言えば当たり前の話。





