2024年3月13日水曜日

ポートレート写真の現像とレタッチ 後編

 前回、少し古い撮影データを例に、Adobe PhotoshopプラグインCameraRAWを使ったRAW現像について説明した。今回はRAW現像の終わった画像をPhotoshop でレタッチを行う。

下の画像はRAW現像が終わりPhotoshop に引き渡した状態。以前ここにも書いたが、どこまでRAW現像でやってどこからPhotoshopで作業するか、明確な線引きはない。もちろんRAW現像でしかできないこともあるし、Photoshopでしかできないこともある。問題はどちらでもできることをどうするか、である。結論から言うと、画像全体を調整する露出補正、ホワイトバランス調整、ノイズ除去までは確実にRAW現像で行った方がよい。前回説明した「強化」もそうだ。ただし「強化」はそもそもPhotoshopではできない機能なので論じるまでもないが。逆にPhotoshopでは選択範囲を使って画像の一部に補正を加えることや画像の一部に映り込んだ不要なものを消したりするのに適している。この選択範囲を作っての作業はそもそもPhotoshop でしかできない。またPhotoshopにはCameraRAWの一部の機能をフィルターとして使うことができるようになった。だが、すでにレタッチをある程度終えた画像でわずかな調整をするにはよいが、CameraRAWで追い込まずあとでPhotoshop でやればいい、とは考えない方がよい。CameraRAWはその名の通りRAWデータを編集するので画像劣化は最小限だが、PhotoshopのCameraRAWフィルターはだいたい同じことができるが画像劣化がCameraRAWより大きい。あまり神経質になるほどの差ではないが、かなりアンダーな画像を大きく持ち上げるような場合はそれなりの差が生じる。できる限りCameraRAWでやっておりたほうが良いと覚えておくとよいだろう。


CameraRAWでの現像が終わりPhotoshopに引き渡した画像

ではレタッチをはじめる。今回は背景のうるさい部分の修正とモデルの胸元の布地の端を修正する。はじめに背景、右下の雑物を消す。正確にはトーンを落とし目立たなくする。レタッチで最も大切なことは選択範囲を作ること。例えばこの写真のように写真の一部の階調を調整するような場合、その作業に仮に3分かかったとすると、そのうち9割近くつまり2分半くらいは選択範囲の作成に費やされる。特にこの写真のような修正する部分が被写体に隣接する場合は選択範囲の作成は難易度が高い。選択範囲はかならず境界線をある程度ぼかした形で用いられる。そうでないとパッチワークのようにレタッチ部分のエッジが目立ち不自然なものになる。そしてその選択範囲の境界線が人と接する部分と接しない部分とでぼかし幅を変える必要があることが多い。変える必要が無ければ「なげ縄ツール」で選んだ選択範囲を「選択範囲の境界をぼかす」コマンドでぼかし2ピクセルとか5ピクセルとかかければよいので楽だがよりよい補正にはこのぼかし具合が大切だ。そして選択範囲の一部の境界のぼかしを変えるのは少し手間がかかる。やり方はいろいろあるが、プロセスが可視化されわかりやすい方法は一旦、ぼかし幅の少ないところの数値で選択範囲全体のエッジをぼかし、これをアルファチャンネルで保存し、アルファチャンネルを表示して必要な部分にさらにぼかし幅を増やす方法である。これだとどの部分にどの程度ぼかしがかかっているかアルファチャンネルの表示で確認できるのでわかりやすい。また、ある程度慣れてくれば別の方法もある。例えば人物との境界は2ピクセル、その他は5ピクセルのぼかしをするのであれば、人物の部分は境界を狙わず、あえて少し広めに選択し、その他の部分は正確に選択範囲を選ぶ。なげ縄ツールを使う。選択範囲のエッジを5ピクセルのぼかしを設定して作るところがポイント。そして今度はエッジのぼかしを2ピクセルに変更し、投げ縄ツールでoptionを押しながら選択範囲、この写真の場合はモデルの腕の部分を引き算する。全体は5ピクセルのぼかし、引き算したところだけ2ピクセルのぼかしとなる。こういう小技はPhotoshopでは結構多い。

さて、選択範囲ができたら調整レイヤーでトーンカーブを選びこの部分のハイライト側をどっさり下げて目立たなくする。

背景の雑物を選択する


トーンカーブ補正で目立たなくする

このとき、画像を直接補正せずに調整レイヤーを使う。調整レイヤーはあとから微調整や場合によっては補正そのものを取りやめることができる。特にこういう階調の調整は後から必ずと言ってよいほど再微調整が発生するので、調整レイヤーを使うことが大前提となる。

次は同じく背景右上の左側の背景を調整する。まずはモデルの腕の際をスタンプツールやなげ縄ツールなどを使ってコピペしながら修正する。

修正部分のクローズアップ(画面左端)

次に残った背景部分をこれもなげ縄ツールで選んで、コンテンツに応じた塗りつぶしで修正する。初めからこのエリアを腕の際から背景までを選んでコンテンツに応じた・・・を使ってもたいていうまくいかない。こういうところは丁寧に修正するしかない。

最後にに布地の胸元の修正を行う。こういう部分は丁寧に修正を行えばほとんどの場合、あとからパラメータを変えたり取りやめにしたりはしない。だから直接編集でかまわない。もしあとからやめる可能性があるような場合はその部分をなげ縄ツールでざっくり選択し、コピーを別レイヤーに作って編集することもあるが、今回はその説明は省く。なげ縄ツールで選んだ後、選択範囲の境界を少しだけぼかす。そして修正をかける。選択範囲のぼかしが原因でうまくいかない時はぼかす前までアンドゥでもどってぼかし範囲を変更し修正する。これを何度か繰り返せばかならず自然に見えるような修正が可能だ。

選択範囲の境界をぼかす

修正はコンテンツに応じた塗りつぶしを使えばよいだろう。ただし参照範囲は肌の部分のみでしておく。このあたりは簡単なので何度かトライすればすぐに使えるようになるだろう。

最後に写真をすこし柔らかくするために少しだけソフトをかける。基本的なやり方は背景レイヤーのコピーを2つ作りそれぞれに、ぼかし-ガウスを15〜30ピクセルくらいかける。コピーした新しいレイヤーの合成モードを「スクリーン」と「乗算」に変更する。




まずはレイヤーをコピーする。分かりやすいように名前を変えておく


合成モードを変更する


コピーしたそれぞれのレイヤーにぼかしをかける


すると画像はこうなる


さすがにこれではボヤボヤでダメである。だが心配はいらない。レイヤーの透明度を調整して柔らかさを調整する。
通常不透明度10〜30%程度だろう。
透明度を変更しいい感じになるよう微調整する


これでレタッチは終了、保存する。保存は必ずPSD形式とする。

データの保存、完了

完成写真


ぼかしによる柔らかさはこの程度で良い。よーく見ないとわからない程度だ。フォトレタッチではこの微妙さが大切だ。やたらといじくり回し、その量も中華料理屋のお玉で味の素ドバッとみたいな編集は絶対やめた方がいい。元の写真を別の写真にするのではなく、元の写真の良さを引き出すような編集を心がける。
編集にかかった時間は、ブログのためのスクリーンショットを撮りながらで22分だった。スクショのタイムスタンプで確認した。なのでスクショ無しでフツーに編集するだけなら15分もあれば十分だろう。ちなみにRAW現像の方は同じくスクショのタイムスタンプで9分くらい。こちらはパラメータをいじるだけなのでフツーに作業すれば5分とかからないだろう。
また、ソフト処理はアクションを設定しておけばとても楽になる。解像度と被写体の大きさに応じてぼかし具合を3種類くらい用意しておけばよいだろう。アクションを使えばぼかし処理にかかる3分を3秒に短縮できる。

すべての作業が終わったらプリントして乾燥させる。そして他の写真同様精査して写真集用に使うかどうかを決定する。