2026年1月16日金曜日

模型製作-2

 年末に検討依頼のあった模型製作2件だが年明け早々にプレゼンがあり、用意した試作品が気に入ってもらえたようで2件とも受注となった。正月返上で作業した甲斐があったというものだ。

新規で受注した2件のうち、1件が今月末までの納期で、もう1件が来月末である。この2件とは別に1件修理の依頼があるのでこれを含めると当社初の模型3件同時進行である。

そうなると進め方の計画をしっかり考えておくことが大切だ。むずかしい形状は試作のときに検証済みなので作業の大部分は計画通り進めることができるだろう。模型会社と違いウチはノウハウが少ないのでどう作るかを考える部分も多い。波型や微妙な曲面などは3Dプリンターがあれば造形できるが平板から熱加工で成形するのは結構むずかしい。

なので、文字通り寝ても覚めても製作方法を考えることになり、思いついた方法を次々と試してみる。こうしてようやく満足できる物を作れるようになるのだが、なにしろ時間がかかるのである。そんなわけで前述の通り正月返上となったのだが、逆に試作段階で大きな問題をクリアしておいたことで、本製作では少なくとも、にっちもさっちも・・とはならないのである。

今回、1つめの模型は展示会向けアーチ型建屋の模型

この模型でむずかしいのがアーチ部材の製作で、波状の板をアーチ型に成形している。まずこの「波状の板」がむずかしい。ネット通販何社かでプラスチック製の波板を探した。模型の縮尺と完全に一致しないでもよいことはクライアントの了解済みなので、ある程度許容幅はある。だが実際に探してみると全く合う物がなく、平板を波状に加工する方針に切り替えた。3Dプリンターでもあればいいのだが前回書いたようにウチにはない。

最終的には、厚さ3ミリのアルミ板に2ミリ径のアルミ丸棒を何本か留めた治具を2枚用意し、これを90〜100度まで加熱し塩ビ板を挟み押さえつけることで成形することにした。理論的にはそれでうまく行きそうだが実際にやってみるとなかなか思ったようにはいかず、試行錯誤に1週間ほどかかった。こうして完成した治具がこれ。

波板製作用の治具とアクリル加工ヒーター

アクリル加工ヒーターは以前製作したもので、この上に治具を置き加熱する。アルミは熱伝導率が高い、つまり治具全体に早くまんべんなく伝わるのがよい。だが温度管理が重要なのでヒーター内蔵の温度計と天ぷら用温度計の2つで温度を測りながら加工した。

治具には蝶番を取付け、上下がぴったり合うようにした。なにしろ高温なので素手で持って位置合わせはできない。軍手やミトンを使っても位置合わせはかなりむずかしい。なので蝶番なのだが、当初耐熱接着剤で留めていたが材料を挟み込んで押さえると蝶番の接着が外れてしまうことが何度もあり、ミニビスで留めることにした。アルミ棒も耐熱接着剤だが、これはそれほど簡単には外れなかった。それでも10本の波板を成形する間に2回ほど外れてしまった。そのたびに冷やして接着剤をはがし、再度接着という手間で、やはりこの手の模型は時間がかかる。

こうしてできあがった波板を再度加熱し今度は別の治具でアーチ型に成形する。このときの加熱は80度程度、それ以上加熱するとせっかく作った波型がくずれてしまう。

波板(手前)をアーチ型に曲げ、最後にリブをつける(奥)

アーチに取り付けるリブは瞬間接着剤を使い、マスキングテープで仮留めしながら少しずつ接着してゆく。これも時間がかかる作業だ。このリブ付きアーチを9本ほど製作する。


2台めの模型は展示会向けの設備の模型

この模型で面倒なのは半割りのテーパー管の製作で、これが模型の本体となる。これはクライアントの許可をもらい発泡塩ビで製作することにした。発泡塩ビはアクリルのような強度はないが割れる心配が少ないのと熱加工が容易なことがメリットだ。今月中旬から作業を開始する予定である。この模型はジオラマ風なので修景も作り込みが必要で本体以外でもかなり時間がかかるだろう。またモーターで回転する部分があるためそれにも製作に時間がかかる。今月中に本体をある程度完成させ、修景や回転装置などを来月半月ほどかけて製作の予定である。


3台めの模型は去年納品した模型の修理

模型本体のアクリルが割れ、接着部も外れてしまったらしい。輸送箱の底には落とした時にできたであろう大きなへこみがあった。輸送はジットボックスを使っているので輸送会社が落とすとは考えられない。展示会の会場で落としたかまたは保管場所で移動時に落としたかのどちらかだろう。いずれにせよ弊社に非はない。だが犯人捜しをしても壊れたものは直らないし、まあ私がせっせと直せば誰も困らないので、笑顔で修理である。アクリルの割れ方を見ると大きな衝撃が加わったのがわかる。となると他の部分も心配だ。オーバーホール、つまりヒビなどが入っていないか総チェックしたほうが良さそうだ。一旦各部をバラして確認しながら部品の交換や再接着をする。また外箱を前回よりひと回り大きくし、緩衝材を増やす予定。

と言うわけで、まずはスケジュールを考える。まず1台目の模型は1月中旬までにアーチの形状を作成し、20日頃までに塗装と小物製作。

2台目の模型は1月中旬から形状の製作にかかり、月末までに基本形状は完成、その後塗装と修景製作にかかり2月中旬には大方完了でクライアントチェック、その後引き続き作業で月末までに完成の予定。

3台目の修理に関しては1月末には完了する予定。

3台目修理中の模型、これはベースのプレート

ベースプレートと模型本体の取付部補強

ベースプレート部でプレートと模型本体が外れてしまった。展示会の会場で大慌てで瞬間接着剤で留めたらしい。その対応に問題はないが、瞬間接着剤をアクリルに使うと接着部分とその周囲が白濁してしまう。そこでこの接着部を一旦外し、ヤスリやサンドペーパーで接着剤を完全に落とし、白濁した周囲を含め磨き、塗装がはがれた部分はエアブラシで再度塗装を行った。ただし一昨年に製作した際の色番号が控えてなかったので白いボードに塗装を仮吹きして色の確認が必要だった。これは反省である。何らかのドキュメントに使用色を残しておくようにした方がようだろう。これは今後製作する全ての模型にもである。

次に割れた部材の交換

割れたアクリルと交換用のパーツ

アクリルでできた部品が割れてしまっていたので、部品を新規に製作して取り替える。今回は安全を見て材質をポリカーボネートに変更した。

衝撃で外れた透明部品

模型には内部が見えるように透明アクリルを部分的に使っていたが、これも外れてしまい、現場で瞬間接着剤で対応してあったため、一旦外して磨き、再度接着することにした。

アクリルの磨きはサンドペーパーの水磨きの後にアクリサンデーというクリームで磨く。このとき、アクリサンデーの前にサンドペーパーで丁寧にキズなどをなくしておくことが大切。あまり深い傷は除き、ある程度目立つキズはサンドペーパー400番の水磨きのあと800番の水磨きさらに1500番か2000番で水磨きの後アクリサンデーで磨くのがよい。サンドペーパーが不十分でアクリサンデーでなんとかしようとするとかなり時間がかかり非常に効率が悪い。またアクリサンデーは独特の臭いがあって手が臭くなるので100均で売っている薄手のビニール手袋を使う。ビニール手袋には3種類あり、厚手のトイレ掃除に使うようなものの他、薄手が2種類ある。手にピッタリの手術用のようなものと、ゆるゆるな付けたり外したりが簡単な料理用のもの。

模型製作では塗装の時は料理用を、アクリル磨きでは手にピッタリのものを使う。ウチではこの手にピッタリのタイプのものをベンケーシーと呼んでいる。50年代のアメリカのテレビドラマから来ている。こんな古いものをどうして知ったかは覚えていないが今でもYouTubeで観ることができるようだ。ちなみにゆるゆるの方はトニーローマと呼んでいる。バーベキューリブを食べる時、娘たちが使うからである。

さて、イスに座って音楽でも聴きながらのんびり作業しようかね。