2021年6月26日土曜日

ベルク「7つの初期歌曲」

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アルバン・ベルクのヴァイオリン協奏曲、ティルソン・トーマス指揮サンフランシスコ響のCD

ヴァイオリン協奏曲を様々な演奏家で聞き比べたくて購入したCDだったが、この中の「7つの初期歌曲」が素晴らしかった。

ソプラノはスザンナ・フィリップスというアメリカの歌手、知らなかった。あまりCDも出ていないが、2018年のニューヨーク、メトロポリタン歌劇場オペラでプッチーニの「ラ・ボエーム」公演のムゼッタを演じて好評だったらしい。



そしてこの「7つの初期歌曲」はすごくいい。先日レコードで購入したハンニガンより明らかにうまい。
ちょっとぽっちゃり太っていて、やはりそのせいか声に「ハリ」があり、とても安定している。

さて、ベルクの7つの初期歌曲はどれも詩がすごくいい。シュトルムやリルケなどの詩にベルクが曲をつけたものだ。

聞いたことあるのはこ2人だけであとは知らない詩人だったけど。

リルケは誰でも知っているだろう。

シュトルムは「みずうみ」という短編を読んだことがある。かつての恋人との回想を美しい文体で綴った小説だったと記憶している。あとで図書室に探しに行こう。

図書室ですぐに見つけることができた。

新潮文庫、訳はドイツ文学者の高橋義孝だった。ペラペラとページを繰ると思い出した。

大学進学で故郷を離れている間にかつての恋人は他の人と結婚してしまった。みずうみのほとりで再開した2人だったが、過ぎ去った青春は戻らないことを知り、去って行く。年をとり、若い頃を回想しながらかつての恋人への想いを語る話。

さて、7つの初期歌曲は、ライナーノーツによると、ベルクがまだシェーンベルクの弟子だった1905年頃にピアノ伴奏のソプラノ曲として作曲され、1928年に管弦楽伴奏として改訂されたとある。

1.夜
2.葦の歌
3.ナイチンゲール
4.夢の冠
5.部屋の中にて
6.愛の賛歌
7.夏の日々

どれもウィーン世紀末の、あの空気を持っていていい。
特に良かったのは「葦の歌」と「ナイチンゲール」かな。
ドイツ語だがなかなか良い和訳が見つからないので、ライナーノーツの英訳も参考に「葦の歌」を訳してみた。

葦の歌
ニコラウス・レーナウ作

森へとつづく秘密の小径
夕暮れの光の中、ひっそりと歩くのがいい
誰もいない葦原へ
そして君を想う
藪が暗く繁り
葦がカサカサと不思議な音をたてる
その嘆きともささやきともいわれぬ声に
私は泣く、そう泣くのだ
私は感じる
今、あなたの声を聞いているのだと
静かに湖に沈んでいく
あなたの愛らしい歌声を


どうです、いいでしょう?

これにベルクの曲がつき、しかも愛らしいスザンナ・フィリップスがあまり感傷的にならず、美しく量感たっぷりに歌う。

もう1曲、せっかくだからシュトルムの「ナイチンゲール」も頑張って訳してみよう。こっちの方が難易度が高い。

ナイチンゲール
テオドール・シュトルム作

それは一晩中鳴いていたナイチンゲールのせい
その甘い歌声
響き、そしてこだまする歌声に
バラのつぼみも開いた
お転婆娘も、今ではすっかり思慮深くなった
夏の帽子を手に持ち、静かに陽射しに耐えている
だが彼女は知らない、これからどうしたらよいのかを
それは一晩中鳴いていたナイチンゲールのせい
その甘い歌声
響き、そしてこだまする歌声に
バラのつぼみも開いた

うーん、イマイチだね。今度再挑戦しよう。

ギル・シャハムのヴァイオリン演奏を聴きたくて買ったCDだったが、当のシャハムは今ひとつだったが、このソプラノが聴けてこ良かった。音楽のこういう出会いはレコードやCDでは体験できても、ストリーミングでは決して体験できない。

仮に同じ曲集を聞いても聞き手側の意識が発動しないからだ。
私は映画や音楽のストリーミングサービスをほとんど利用しないのはこれが理由だ。

さて、もう少しベルクの歌曲のCDを聴いてみようかね。