2025年5月30日金曜日

シュリンクフィルムシーラーの台を製作

完成したシーラー台(塗装済み)

印刷物の成果品を納品する際、印刷所から客先へ直送の場合と、一旦ココに納品された物を梱包し直して納品する場合がある。一旦ココに届いた物は通常25部または50部ごとに再パックして発送する。その際のパックにはシュリンクフィルムというのを使う。ロールのフィルムをシーラーで封をしながらカットし、これをヒートガンやドライヤーなどでフィルムを収縮させ密着させる。

今までは下の写真のように作業用のワゴンの上にシーラーという機械を置き、向こう側にフィルムのロールを置き使っていた。手前には高さ調整のために厚い画集を3冊置いた。

シーラー

これでなんとか作業はできたのだが、フィルムのロールは結構重いのでシールしては引き出しまたシールして引き出す作業の際、引き出すのは少し力が必要で、出し過ぎた分を戻すのも面倒だった。ただしシール作業そのものの頻度が少ないので我慢して使っていた。ところが最近、成果物を一旦ココに納品する機会が増え、したがってこの装置を使う頻度も増えてきた。そうなるともう少し作業しやすくしたい。そこでシーラーの台を製作することにした。

まずはいつものように図面を描く。

図面

材料は余っていた集成材の棚板を使うことにした。工房でカットし組立て、それからサンドペーパーがけに半日くらいで完成した。近々使う予定なので塗装は乾燥に時間がかかるので一旦このままとした。

シーラー台

普段使わないときは半分に折りたたんで収納できるようにした。

折りたたんだ状態

これでも結構大きいが使い勝手を優先した。

シュリンクフィルムをセット

これならストレスなく作業できそうである。

今回は簡単な工作だったが、こうしたちょっとした物でもあると作業性が格段によくなるので製作して正解だった。今回のカタログは3000部の納品、これを50部ずつにパックしたので60パック、シーラー台が大活躍した。


その後、塗装してこれで完成である。最後にカバーをかけてパックしたカタログとともに写真を撮った。

カバーをかけたシーラー台とパック済みのカタログ

カバーは昔作った風呂敷を暫定で使うことにした。ちゃんとしたカバーはそのうち作ればいいだろう。





2025年5月14日水曜日

月が好き

 図書室が完成して倉庫の棚も付け終わった。仕事も少しずつ増えてきているが例年に比べればまだ半分以下である。

という訳で次に何を作るか考えることにする。

さて今日は年一度のメディカルチェックアップのためいつものクリニックへ行った。すごく気候がよく外は気持ちがいい。クリニックは少し混んでいていろいろな検査で2時間半ほどかかったが待ち時間はずっと読書していたのでまったく苦にならなかった。松岡正剛著「ルナティック」以前読んだ本だがもう一度読んでいる。松岡さんの本の中では特に好きな一冊。月は特別なのだ。

私も月は大好きで、思えば今の世の中は都会はもちろん結構な田舎でも夜に真っ暗になることはほとんどない。都会は昼間と同じくらい明るいし、田舎も街灯は多い。だから月のことは気にしないでも生活に何ら支障はない。だがもし電気がなかったら夜は月明かりだけになる。そうなると満月に限らず夜空に月があるかないかというは人にも動物にも一大事だ。月さえ出ていれば夜道でもそこそこ歩くことができる。

だからその昔、月とはありがたいものであったことが容易に想像できる。しかし反面本来、闇によって消し去られるものも情け容赦なくつまびらかにさせる月には秘密を暴くという性格を重ねて捉える向きもあった。

話は変わるが、人は他人のことが気になって仕方がない生き物だと言うことは以前会社勤めをしていたときに思い知った。特に女性はそうらしいがいやいや男もあまり変わらない。幸いウチは私もカミさんも他人のことはどうでもいいし、他人に詮索されるのがキライだった、今でもキライだ。カミさんは以前会社で働いていたときも他の女性社員との会話が人の噂話ばかりで中に入れない、と言っていたし、娘の幼稚園のママ友ともお茶に行くのは苦手・・・とボヤいていた。

私は男だって同じだよ、昼食行っても夜飲みに行っても、誰々はどうだこうだとそんな話が好きなのが何人もいるよ、と。

そしてそんな相手に「そう?」と気のない返事をしても全然わかってくれなくてうんざりだった。

私の母も以前田舎住まいをしていたとき、車に近所のおばちゃんを乗せてあげて街まで行ったときすれ違う車をみてそのおばちゃんが「あれはどこどこの誰々だが今頃どこにいくのかしら」とか言っていてうんざりだと言っていた。小説では赤毛のアンにレイチェル・リンドというおばさんが出てくる。それでマシュウ・カスバートが正装して馬車で駅までアンを迎えに行くのを見かけて居ても立ってももいられなくなりマリラに聞きに行く「まったく午後が台無しだわ」とか言いながら。

日本は島国なのでみんなで噂して不穏分子を事前にマークする文化なのだろうか。島国というのは自分たちの価値観と異なる人がいても出て行くところがないからみんなで気にしておきましょうなのだろう。今ではもちろんそんな必要はなくなった。だがDNAに刻まれた詮索好きの遺伝子はそう簡単にはなくならないのだろう。そうそうプリンスエドワード島も島だね。

私個人としては今は独立してそういう無駄なオツキアイはなくなり、仕事も自分のやりたいようにできるので毎日がとても楽しい。

さて、月に戻ろう。月は闇を照らす希望であると同時に秘密を暴く密偵なのだ。何が言いたいかというと「ひとすじ縄ではいかないところが月の魅力」と言うことだ。だから月を絵に描くとき猫はいっしょに描くが犬を描くことはまずない。飼い主に尻尾を振りまくってご機嫌をとる犬と月は合わないのだ。魅力的だが簡単に裏切り何を考えているかわからない猫といっしょに描くのだ。

月は地球に対していつも同じ面を向けている。つまり地球から見えない月の裏側は地球でいくら待っても月は見せてくれない。これは月が地球規模の小さな惑星に対して大きすぎるので質量分布と重力の兼ね合いでそうなっているのだが、こういうところも太古の昔から月の不可思議な性格を形成していた。月が常に同じ向きでこちらを向いているから月は平面的に見え「お盆のような月」に見え、つまり誰かが丸い大きな紙に書いた嘘っぽい月を空の上に置いてあるように感じさせ、ひいては地球も平らで星々は宙(そら)に置かれたオブジェというような感覚主義の人たちが出てくるのだろう。

さて、ここからが大切なのだが、月の秘密を暴く性格付けというのは上に揚げた詮索好きはさておき、詮索することもされることも嫌いな私たちのような人たちにとっていったい何なのだろうか。詮索好きの人たちは月のことなど知らないし気にもしていない。人の噂話が好きな人は月の噂話に興味はないのである。仮に昼食を食べに行ったときツマラナイ噂話にうんざりして「今日は月はどのくらいかな」などと言ってもキョトンとするだけだ。実際に試してみたけど本当にキョトンだった。では月好きの人たちにとって月の先に揚げた性格というのはどのように捉えるべきなのだろうか。私はこう思っている。詮索好きのツマラナイ人たちに気分を害されるのではなく「月のせい」にして「まったく困ったものだ月には、それでも月が好きなんだ」というそういう役回りなのだと。人は生きている限り詮索される。それを「月」のせいにしてだから仕方ないよね、と。

さて最後に庚申の日について。庚申の日とは人の中に居る虫(しょうけら)が9匹いて(実際の虫ではなく概念としての虫ね)親分3匹にそれぞれ子分が2匹居て全部で9匹、これが2ヶ月に一度、あなたが寝ている間に宙に上がって神様だか何だかにあなたの所業を告げ口するという民間信仰。だからその日は徹夜して虫が宙に上がるのを防ぎましょうというということになる。これなんて先の月の話によく似ているが、庚申は月とは直接関係ない。だが松岡さんの「ルナティック」では庚申の日も「月」とうまく絡めて語られている。松岡さんはこういう文脈づくりのテクニックが最高にウマいのである。

今の月、西の空に沈む前

オリンパスのマイクロフォーサーズの300ミリレンスはフルサイズ換算600ミリでこれにテレコンバージョンレンズを付けると1200ミリになる。オリンパスは手ぶれ補正が秀逸でこの1200ミリ相当のレンズを手持ちで撮影できる。こんなカメラは他にはない。上の月は撮影条件があまり良くなく電線も邪魔だが手持ち15分の1秒である。1200ミリの超望遠を手持ちで撮影できるのである。

以前撮影した月食でもこのレンズが大活躍した。マイクロフォーサイズはセンサーサイズが小さいのでスペックオタクの人には人気がないが月を撮るなら最高のカメラである。





2025年4月29日火曜日

図書室のリノベーション-2

 前回の続きで図書室のリノベーション。本棚の製作はビスケットジョイント用の溝切りで苦戦することになった。4ミリのルータービットで溝を切るのだが、1本目の本棚の加工が終わり2本目に取りかかったところでビットが折れてしまった。無理な力はかけていないのだが、まあこういうこともあるかな、とホームセンターへ行きビットを再購入。予備も欲しかったが1本しか在庫がなかった。新しいビットで作業再開。だが次の1本分の製作が終わりにさしかかったところでまたしても折れてしまった。うーん。折れた部分を見るとどうも曲げやせん断ではなく、ねじ切れたような感じである。仕方がない、ビットを4ミリから5ミリに変更した。ビスケットの合板が4ミリなのでゆるいがその分ボンドをたっぷり付けて接着の養生時間を長めに設定することにした。よって製作できる本数が1日1本となった。ゆるい分クランプでの固定時間が2倍以上必要だからだがまあ仕方がない。本棚は残り4本なので養生を含め5日間かかる予定。

もう一つ、可変棚のダボ穴を家にあった金具に合わせて開けたが、今回注文した金具は少し径が大きく、うまく入らず少し穴を広げる必要があった。

こうした想定外の問題は本棚に限らず、模型製作でも手芸でも皮細工でもよくおきる。大事なのは慌てて手を打たないことだ。若い頃はこれでよく失敗をした。万全の計画で丁寧に始めたのが途中でつまずき、最後はテキトーになってしまう。これではもったいない。さっさと問題をフィックスしたい気持ちを抑えて時間と手間をかけて解決することで良い物が作れる。

想定外と言えばもうひとつ、工房の集塵機が使えなくなった。故障ではない、ゴミがモーターのファンに絡まったようだ。分解して掃除する。そもそもこの集塵機、何年か前に急いで作ったもので色々問題も多い。これら問題点を解決せず応急で直してもまたすぐおかしくなることは間違いない。そこで集塵機を作り直すことにした。ほんとうはとりあえず使えるようにして本棚を優先すべきなのだろうが、どうも図書室や倉庫などが終わったら「また今度でいいや」となりそうだったので、同時に作業することにした。

さて本棚だが新規製作6台のうち大型4本が完成し図書室に設置も終わった。残るは文庫やコミックなどの小型の本棚2台である。小型と言っても高さと幅は大型と同じで奥行きが少ないだけで棚板は固定だが段数が多い。重量的には大型と変わらない。だがこちらはビスケットジョイントもダボも使わないので木の削りカスはほとんど出ない。集塵機なしでもなんとかなるかもしれない。


完成して設置した本棚4台



そうこうしている間に仕事も何件か入ってきた。うーん、予定通りに進めるのが難しくなってきた。

工期を見直し、図書室と集塵機を同時進行し、最終的にはゴールデンウィーク前までに終える計画に変更した。同時進行の利点は接着剤の養生中なども別のことができ効率的なことと、同じ姿勢の連続は肩や腰に結構辛いが両方を交互ですることで楽になること。欠点は集塵機ができるまで製作にテーブルソーもスライド丸ノコも使えないことである。

その後本棚1台が完成し、製作する本棚はあと1台となった。集塵機の方はようやく4月21日にある程度組み終え、試験的に使ってみることにした。またこれでスライド丸ノコが使えるようになったので残る1台の本棚も製作可能になった。実は最後の1台は室内側との取合いでどうしても幅を1センチ詰める必要がでてきたのでスライド丸ノコを使う必要があり、集塵機が使えるようになるのを待っていた。

そんな訳でなんとかゴールデンウィーク前に図書室のリノベーションが終わった。厳密にはまだ少し作業が残っているがまあ完成で良いだろう。次は隣の倉庫の棚づくりである。これはゴールデンウィーク中に完成の予定。


図書室の本棚-1




図書室の本棚-2

少し作業が残っているのでまだ工具やらがテーブルに置いてある。でもここまで来たらあとはのんびり作業すればよい。






2025年4月21日月曜日

集塵機の製作

 ペール缶の上に取り付けるサイクロン方式の集塵装置をだいぶ前に楽天で購入した。古い掃除機を分解してファンモーターを取り外し、これにこのサイクロン集塵装置を付けて使っていた。だがこのサイクロン集塵装置、比較的粒の大きいダストは集塵するが粉末はほとんど素通りした。そこでファンモーターの廃棄側に穴あきボックスを取付け、そこにフィルターとしてニードルフェルトを貼って使っていた。だがこの方式だと細かなダストはファンモーターを通過することになる。細かなダスト以外にもビニール袋の断片などもサイクロンで補足できずファンモーターを通過し、時々これらのゴミがファンモーターに引っかかるので、今までにも何度かファンモータを掃除したのだが、掃除のたびに結構大変だった。そこで今回分解掃除と同時に集塵装置そのものを作り直すことにした。

まずはいつものように設計図を描く。

図面

ただし、この図面はあくまで参考で実際には臨機応変に変更しながら作ることにした。

また、この集塵機は基本的には工房の定位置に設置するものなのでキャスターは付けるが頻繁に移動したりしない。だから重量は気にせず、全体はOSBの端材を使って作ることにした。これは図書室の壁の補強で使ったOSBの余りである。OSBでモーターを囲い、吸音材を貼ることで稼働時の音を小さくできるのではと考えたのだがどうだろうか。これはできあがって動かしてみるまでわからない。また今回の一番大きなポイントはサイクロン集塵装置とファンモーターの間に集塵フィルターをセットし引き出して掃除できるようにした。これでファンモータの吸気口に細かなゴミやビニール片などが詰まる心配はなくなるだろう。

製作中の集塵機

集塵機の製作中は手前の古い掃除かが大活躍している。これは30年以上前の掃除機だが今でも問題なく使える。

話は脱線するが、電化製品は今のものより昔のものの方が作りがしっかりしていた。エアコンや冷蔵庫など省エネ性能が重視されるものはあまり古いものは良くないかもしれないが掃除機、洗濯機、電子レンジなどはいわゆる枯れた技術で、つまりもう何十年も前に技術的にはピークを迎えていて、それ以上進歩しない。家電メーカーはツマラナイ機能を付加して新製品をアピールするが全く意味がない。むしろ内部のパーツが中国製の品質の悪いものや、金属部品がプラスチックに、銅がアルミに置き換わって寿命がどんどん短くなっている。これは私の思い込みというわけではない。去年修理に来た大手家電メーカーの修理やさんが「部品が昔に比べ耐久性がなくなっている」とはっきり言っていた。それも二人(別の会社)が同じように言っていたのだからまず間違いはないだろう。ずいぶん薄っぺらい時代になったものだと感じるのは私が歳を取ったせだろうか。

さて、集塵機だがこれがないとテーブルソーやスライド丸ノコが使えない。つまりこの集塵機の製作はテーブルソーを使いたいところだが、すべてのこぎりで材料を切っている。

部分的にはジグソーも使ったが、のこぎりやジグソーの木くずはこの古い掃除機を使って掃除した。だがこの掃除機では紙パックがすぐにいっぱいになってしまうが仕方がない。

ただし、図書室の本棚の最後の1台はホームセンターでカットしてもらったのだが、あと1センチほど幅を詰める必要が出てきたのでどうしてもスライド丸ノコを使う必要があった。スライド丸ノコとテーブルソーはさすがに掃除機では対応できない。発生するダストの量が多いので。つまり集塵機が使えないと図書室も完成しないのである。

その後、集塵機はほぼ組み終わって、ここでいったん集塵ダクトに取り付けて試験運転をすることにした。結果はまあまあで音はもう少し小さいとよかったのだが以前に比べれば少し小さくなった。フィルターは完璧に機能していて問題はない。吸引力も以前と変わらずこれも合格である。この集塵機はこの場所が定位置だが、移動して別の場所で使用することもできるようにした。そのため電源ケーブルを少し長めにしたのを普段巻き付けておくリールやこの位置から引き出すときのハンドルなどこのあとも少し手をかける予定だが、まずは図書室を早く仕上げてしまいたので、いったんこの状態で使うことにした。

試験運転中の集塵機

その後、コードリールを取り付け、塗装も終わった。OSBは切り口はサンドペーパーをかけても木の繊維により「とげ」がささるので、こういう物の場合はパテ処理と塗装をしたほうがよい。
完成した集塵機

塗料はヨドバシはお取り寄せで時間がかかりそうだったのでAmazonに注文。アサヒペンスーパーコートという水性塗料。なぜか色によって値段がかなり違っていた。作業台の下に置く物なので何色でもいいかな、と一番安いヘリテージグリーンを選んだ。1300円だった、ちなみに赤は2600円と2倍だった。ふーん。

箱の手前にくっついている黒い小箱は集塵機のオンオフ用ケーブルリモコン。ケーブルはリールに巻き付けてある。ウラ側には電源ケーブルを巻き付けるリールも付けた。






2025年4月13日日曜日

図書室のリノベーション-1

 仕事が忙しく何度も中断していた図書室のリノベーションがようやくリスタートである。今回は中断することはなさそうである。この日をどれだけ待ちわびたことか。図書室は本を収蔵するという目的であることは間違いないが、それだけではない。本に囲まれて過ごすという最高の時間を提供してくれる場として特別なのである。熱い紅茶をポットに入れて本棚から本を何冊かテーブルに置いてページを繰りながらお茶を飲む。最高に贅沢な時間の使い方なのである。

2016年に今の図書室を作り、本棚を6本製作した。これらとは別にコクヨのスチール本棚が2本あり、全部で8本の本棚でスタートした。それで数年は良かったのだが、部屋の一部にスチールラックがあり、そこにあれこれ普段使わない物を収納していた。つまり部屋として完全な図書室とはなっていなかった。また本や仕事のファイルが増え本棚も足りなくなった。そこで2023年の春頃から図書室のリノベーションを計画し始めた。レイアウトは決まっていたので図面を描き、あとは工事の段取りかな、というところまで行ったのだが、何しろ仕事が忙しくなかなか着手できなかった。


平面計画(ピンクが新規の本棚)



工事の手順は新規に本棚を設置する部分の壁の補強。そして新規本棚6本の製作と設置である。簡単そうだが結構面倒な作業が多く、仮に仕事がなくこれだけに専念できたとしても1ヶ月はかかる作業だ。だから寝る間も惜しんで仕事をしているような状況ではいつまで経っても終わらない。いままで仕事が少し減るたびに今度こそ、今度こそと何度か始めようとしたのだが結局始められず、初めの計画から丸2年が経ってしまった。

ところが今年は3月中旬から4月中旬の今まで新規の仕事が無く、いくつか引き合いはあるがまだ始まっていない。本来なら個人経営の会社にとってヒマほど恐ろしいものはないのだが、今年は「図書室リノベーションの好機を与えてくれた」と前向きに考えて3月中旬から工事を再開したのである。

3月20日にホームセンターに壁補強用のOSBを買いに行き、そこから実質的な工事がスタートした。約2週間かけて壁の補強や関連するその他の工事を完了し、4月10日に本棚の材料をホームセンターに注文に行った。カットも依頼したのだが何しろ量が多いので当日は無理で、翌日の夜にできましたよ、の電話をもらった。そこで12日に材料を引き取りに行った。

本は重いので普通の棚板用の18ミリ厚の集成材は使えない、弱すぎるので。そこで厚さ25ミリの集成材にした。これは2016年に作った時と同じ仕様である。長さ3m幅50センチ厚さ25ミリの集成材を使う。これを9枚購入しカットを依頼した。図面は加工の担当者にわかりやすいように丁寧に描いた。


カット加工図



カットしてもらった材料はホームセンターの軽トラを借りて家まで運んだ。方南通りにある島忠というホームセンターである。軽トラは積み込みなどは自分でする必要があるが5km以内で往復1時間まで無料で貸してくれるのでとても助かる。
本棚の側板は高さが2.3mもあるので軽トラの荷台には収まらない。運転席の上から斜めに荷台に載せることになる。輸送の途中で荷崩れなど絶対に起こしてはならないので、ロープを借りてしっかり固定する。ロープも無料で貸してくれた。荷台のロープがけというのはそれほど難しくはないがちょっとしたコツがあり、それを知らない人がこれでいいかな、と結ぶとたいへん危険である。
さて、無事に家まで運んだ材料を降ろし、軽トラを返してそれからバスで帰ってきた。いつもそうだが、こういう買い物は家族みんなで行くことが多い。今日もカミさんと娘がいっしょだった。軽トラには2人しか乗れないのでカミさんはホームセンターで家具を見ながら待っていた。休日で人が多くてちょっと・・・と言っていた。帰りにリトルマーメイドというパン屋でパンを買ってバスで仲良く帰って来た。買ってきたパンを食べながらのんびり。
その後、玄関に置いてあった本棚の材料を工房の近くに移動した。


本棚の材料



4月13日から本棚の組み立てにかかる。まずは設計図。すでに設計図は制作済みだが組立て用の図面があったほうがよい。そこで既存の設計図から組立要領図を作成した。たとえば設計図では棚板のピッチが30センチだとしたら、30、30、30と記入してある。だが製作の時は、30、60、90と起点からの長さを書いてあった方がわかりやすいし誤差も少ない。また寸法を押さえるポイントも設計図とは異なる。なにしろ間違えたら最悪材料の再購入となり面倒だ。だから作りやすく間違えにくいことを優先して組立要領図を作る。
組立要領図



上が大きな単行本の本棚、下が文庫本の本棚。単行本の本棚は棚板が1段おきに固定と可変が交互となっている。固定棚は完全に側板に接着固定する。可変棚は金属製のダボを使って棚板の高さを調整できるようにする。つまり側板には接着しない。

接着する棚板は本棚全体の構造要素なのでしっかり固定する必要があるのでビスケットジョイントと接着剤を使う。

ビスケットジョイントはルータービットで溝を切り、そこにベニヤ板を小さくカットしたジョイント部材を差し込み接着剤で固定する。可変棚はダボ用の穴あけをする。基準高さに加え上下5センチにも受けを入れておく。


加工済みの側板



工房で部材の加工が終わると、それらを図書室へ運び、組立ては図書室で行うことにした。なにしろ工房はとても狭いので加工と同時に組立てはできない。それに組立てだけなら木くずはほとんど発生しないので図書室での作業でも問題ない。


組立て中の本棚



ざっと時間を計ってみたら、本棚1本分の材料の加工と組み立てにあわせて2時間ほどかかった。また1台組立てクランプで固定、接着剤がある程度強度が出てクランプを外せるまで3時間くらいはかかる。もちろんまだ立て起こしたりはできない。そのまま一晩置いておく。

だがその3時間に次を組立てもできるので1日に2本の本棚を製作できる。ただし組み上がった本棚に掃除機片手に糸面取りや補強した壁面への取付け、本棚どうしの連結もそれなりに時間がかかる。さらに今週は仕事の打合せが2件ほどあるので、この作業ばかりに時間はかけられない。当面、今週末4月20日を完成を目標とすることにした。






2025年3月20日木曜日

ファクシミリ付き電話機を買う

 4月から新しく取引開始する会社と受発注の件で打合せに行ってきた。受発注システムは自動でFAXを送信するので受信したら記入して送り返すことになるらしい。今どきFAX?などと言ってはいけない、この手の仕組み作りにはすごく費用がかかるので、いったんできあがった仕組みを変えるのはよほど重大な理由がないとやらない方がいいからだ。

特に安易にコンピューターソフトによるシステムを作ろうものならサラリーマンの年収の何倍もの費用をソフト会社に払うことになる。さらにOSのアップデートとサポート終了に伴うソフトウェアの更新にも多大な費用がかかる。

以前働いていた会社で私はファイルメーカーというソフトを使って自分の事業部の売上管理やら外注費支払い管理のプログラムを作って使っていた。使うたびに時間があると少しずつ改善してみんな結構便利に使っていた。会社の他の事業部はマイクロソフトエクセルで毎回作っていて、あほらし、と感じてファイルメーカーで作ったのだが、自分で言うのも何だが必要な作業時間が5分の1から10分の1くらいになった。ただしソフトのバージョンアップは面倒なのでしなかった。

その後会社のメインの売上管理システムをソフト屋さんに依頼してファイルメーカーベースにするという話を聞いた。別にどうでもよかったが、なぜか私の部にも影響が出て、これを機にソフトをバージョンアップせよとのお達しがきたのである。面倒なのでその会社にやってもらったら?とテキトーに答えておいた。そしたら見積りが来たらしい。いくら?ときいたらコンバージョンだけで結構な費用で(確か40万円くらいだった)、それでバージョンアップに伴う不具合の修正はしない、というから驚いた。へ?じゃあ仕方がないから自分でやるかな、と言って最新版に変換した。ほとんど不具合はなかたったが多少調整は必要だった。これ全部合わせて半日もかからなかった。ちなみに調整が半日でコンバージョンは10分で終わった。いや、正確には3分くらいだったと思う。3分40万円かぁ、でもべつにそのソフト会社を悪くは思っていない。ソフト関連ではよくよくある話だからだ。

だから新規の取引先で古いFAXによる発注と聞いたときに、どちらかというと良い会社だなぁとすら感じたのが正直なところだ。

そんな訳でFAXである。でもウチにはFAXはない。以前業務用のFAX機を持っていたが、全く使わなくなり処分してしまった。仕方がない、購入することにした。FAXはほかにWEBによるPDF変換してメールで送ってくれるサービスなんかもあるらしいが、仕事で相手がある話でそんなサービスは使いたくない。セキュリティの保証がないか、あってもこちらできちんと確認するスキルもヒマもないからだ。そんな面倒なことするくらいだったらFAX機能付き電話機を買うほうが安いし楽というものだ。そのFAXも使うのはおそらく月に1度か2度かその程度だろう。受けたFAXも送ったFAXもスキャンして電子データで保存しておくので、シンプルで安い機械でいい。そんなわけで、価格ドットコムで調べてみたのだが、安いものはほとんど1種類しかなく、それを買うことにした。パナソニックの3万円くらいだったかな家庭用ファックス機能付き電話機、ヨドバシに注文したらすぐに届いた。

他に選択肢はないし、FAX機能付き電話機なんてどれも似たようなものなのでしかたがない。とりあえず開封してサイドデスクの上に置いてみた。

FAX機能付き電話機



うーん。必要なものだから仕方がないとは言え、これは絶対目の届くところには置きたくない。私の書斎には絶対合わない。すごく浮く。このFAX機能付き電話機、用紙をセットしていつでも受信できるようにしておく必要はあるので、他の機器のように使うときだけセットして・・・という置き方はできない。
用紙をセットすると高さは35センチほど必要で、用紙を排出するスペースとして前面にA4サイズの奥行き、トータルで機械の奥行き+30センチ程度=50センチ強必要ということになる。もう少し真剣に考えるべきだったかもしれない、と後悔しても始まらない。どこか目立たない「ほら穴」のようなスペースを見つけて、そこに置くしかないのかも。

何はともあれ動作確認、とも思ったがぜーんぜんやる気にならず、そのまま置いてある。

このファクシミリ付き電話機、コードレスの子機も付いていたが開封せず袋に入れたままダンボールに放り込んだ。

話は変わるが私は今の新築住宅や共同住宅(日本でマンションと呼ばれているもの)のあのビニールクロスの天井、壁が好きになれない。だからウチではビニールクロスはトイレと脱衣室くらいしか使っていない。壁は漆喰がいい。古くなった木部が古色を帯びてくるのも好きだ。だがあのビニールクロスというものは家が完成したときが一番良く、何年経っても味など出てこない。薄汚れてみっともなくなるだけだ。そうするとまた貼り替えるのである。それでしばらくはキレイ、そしてまた薄汚れてくるのくり返し。だが漆喰や木はちがう。ヨゴレや傷が味になる。どちらがよいかは考えるまでもないように思うのだが。また住宅の天井にデカい蛍光灯(今はLED照明)というのも嫌いだ、ビニールクロス+天井照明だともう全く落ち着かない。この真っ白なプラスチックのFAX機能付き電話機はそれに通ずる何か違和感がして生理的に受け付けないのである。

独立して、自分の気に入ったものだけ身の回りに置いて、楽しく仕事をするぞー、というのもこんなFAX機能付き電話機1台で台無しになってしまうものなのだなぁ。と諸行無常を感じる1日だった。






2025年3月13日木曜日

デスクまわりの「ちょい置き」その後

 前々回だったか、仕事をしているとどうしてもデスクまわりに「ちょい置き」があり、これが仕事場所が散らかる元凶になっている。だからちょい置きは極力やめにして、どうしても必要な分は、つまり避けられないものは「ちょい置きスペース」を作り、そこだけに置くことにする、と書いた。

その後、ちょい置きスペースも木製のトレーを2つほど作った。以来届いた郵便物や参考の冊子などはこの「ちょい置きスペース」を活用している。

いまのところうまくいっているように感じている。今日は仕事で水彩画を描いているが、絵の具が乾くまでの間にデスクまわりのチェックをした。

コンピューターの作業机は特に問題ないのでサイドデスクと作業机だけチェックする。以前も書いたがこの写真を撮るときには一切手を加えず、ありのままを撮るのがルールである。片付けたのでは意味がないからだ。まずはサイドデスク。

サイドデスク


ここは問題ない。書類が置いてあるが、やりかけの仕事で必要な書類なのでこれらはよい。

次に作業机


作業机



ここも問題ない、描いている水彩画の道具だけである。少しモニター前が散らかっているが、これくらいはよいだろう。ちょい置きスペースにもあれこれ置いてある。つまりちゃんと使っている。よしよし。描いているのは鹿の絵、カタログに使う水彩画に鹿を入れてほしいという要望があったので鹿を描いている。カタログの挿絵の場合、芸術作品ではないので、鹿だけ描いてスキャン後画像合成で入れる。だから元の水彩画には手を入れず、鹿だけの絵を描いている。下図を描いて水彩画に仕上げてでだいたい20分くらいだろうか、もっと短いな、多分。だが描いては乾かし、また描いては乾かしなのでそういう意味では30分以上かかる。乾くのを待っている間にこれを書いている。

以前は3Dの計算中に水彩画を描いたりしていたが、最近のコンピューターはスピードが速いので計算時間はとても短い。ちょっとしたカットならウチのM1ultraのMac Studioなら数分で計算は終わる。だから思考が分散しないように3Dは3D、水彩画は水彩画とすることが多い。ときどき1時間くらい計算にかかるものもあるが、そんな時は計算中に別の仕事をすることもあるが、最近は少ない。

さて、鹿も描き終わったので乾くのを待ってスキャンニングである。乾くまでもう10分くらいだろう。ついでに撮った本棚の写真


本棚とアンプ、プリンター置き場



ここも問題ない。ちょっと気になるのがこのアンプやプリンターの下に置いてあるプリント用紙や大型の孔あけパンチや中綴じ用のこれまたデカいステープラーである。かなり大きいので他に置く場所がないのだが、そのうちなんとかしたい。

さて、鹿の絵だが合成したが納得いかず結局すべて描き直すことにした。やれやれ。


描き直した絵



これは透明水彩を描いている人には常識かもしれないが、透明水彩のパレットはめったに洗わない。それぞれの小窓にバランス良く絵の具をチューブから出しておき、これに水を含んだ絵筆でなでて筆についた絵の具を広い場所で他に色と少し混ぜて色を作ってそれで絵を描く。透明水彩は乾燥してカチカチになっても水を加えればまた溶ける。だから毎回チューブから出して塗る必要はない。実に経済的だし、描きたいなとおもったらすぐに描けるのがいい。

ちなみにアクリルガッシュは同じ水性だがこういう使い方はできない。乾くとカチカチになり水を加えても二度と溶けない。だから梅皿も使い終わったらすぐに洗わないと使えなくなってしまう。アクリルガッシュは水性ペンキとほぼ同じように思われる。

もう一つ、エアブラシで使うラッカー、これも塗装が完全に乾燥してもラッカーを付けた布地などで少しこすると溶けて取れる。だから部分的に失敗しても先の尖ったタイプの綿棒で塗装を剥がし、再度エアブラシを吹くことができる。平らな面の場合はラッカー補修よりは目の細かいサンドペーパーまたはスポンジヤスリで軽くコシコシと塗装を落としエアブラシを吹く。エアブラシはオタク文化なので、いろいろ細かいこだわりを持っている人が多いので、こんなこと書くと「わかってないなぁ」なんて言い出す人がいるので、まあこのくらいで。

私は透明水彩が好きだが芸術的な絵が描けるほどの腕はない。だがときどき描く。3D-CGやイラストレーターとはちがった味があり、それが最適な場合があるからだ。だがまだまだうまく描けないので時々YouTubeなどの動画で勉強している。今は猛烈に忙しいのでそんな時間はないが、4月に入って少し落ち着いたらまた練習再開である。

思えば仕事の上での私のスキルはどれもまだまだで、世の中には上には上がいる。それは痛いほどよくわかっている。ではどうして私のところに仕事の依頼をいただけるのかというとそれには理由がある。と少なくとも自分ではそう思っている。例えばグラフィックデザイナーなんて世の中に掃いて捨てるほどたくさんいる。だからわかりやすいチラシのデザインなどは価格競争となることが多い。こういうやり方でこんな風に、でいくらで?となる。デザイナーAさんが10万円でデザイナーBさんが7万円だったらBさんの仕事になる。食い詰めデザイナーのCさんが5万円といえばCさんが時間単価1000円以下で取ることもある。仕事なくて遊んでいるより安くてもいいから、という理由で受ける。だからデザイナーはそういう仕事を生業にするのは大変厳しい。別の言い方をすれば長続きしない。こんなことやっているよりスーパーのレジ打ちの方が時給がいい、なんてことになるからだ。ソフトのスキルがあってデザインセンスもそこそこあってもそうなってしまう。

私の仕事は、建設系のカタログなどのデザインが多い。そしてダメ元で必ず提案を入れる。その提案は却下になることも多い。お客もいろいろで、言った通りでないと気に入らない人もいる。だが提案を真面目に検討してくれる人もいる。

お客は、たいてい「ウリ」を特長として列挙してくる、当然だ。だがそれが7つも8つもある場合、読み手はウンザリしてしまい、まず読んでくれない。だからこういう風に絞ってこれとこれはこういう風に表現してはどうでしょうか、と提案する。そのためにはこちらが技術をきちんと理解する必要がある。そうでないとそもそも提案など絶対できない。ちょっと文章が多いので少なくできませんか?なんて抽象的なこと言ってもなかなか動いてくれない。具体的にこういうのいかがしょうか、と提案できて初めて検討してもらえる。当然お客から提供される資料も理解する必要がある。図面が読めて技術資料の内容と照合しながら提案を考える。図面に関しては間違いを見つけて指摘できるくらいまでしっかり読む。

例えば今制作中の製品のカタログでは、基礎に特長があって通常製品ではコンクリートを使って大きな基礎を作ることが必要なのだが、この製品はコンクリート基礎無しで転倒モーメントに耐えられる構造になっている。お客さんは「コンクリート基礎が不要です」という説明書きを加えることを考えている。だが私は「どうしてコンクリート基礎無しでこれだけの応力に耐えられるのか」を説明する絵があった方がいいだろうと考え、それを提案する。

幸い私はお客に恵まれていて、黙って言ったとおりに作ってくれ、というお客はまずいない。いや以前はいたがそういう人は全部自分で原稿を作って、あとは印刷さんのデザイナーに安くキレイに仕上げてもらった方がよいので、私との関係は長続きしないということかもしれない。だが完成したカタログなどを見比べれば差は一目瞭然なので私への依頼は減らない。自慢ぽく聞こえるかもしれないが、これが実に大事なことなのであえて言わせてもらいたい。

つまり、デザインできます、イラレ使えます、ではまず食っていけないのである。中にはすごいイラストを描く人もいて、それで仕事もいっぱいあって、というのはあるだろうが、そこを目指すのは茨の道である。

もちろん技術を理解するのも常に学習が必要で、それはそれで大変だ。だが学習した分だけ確実に知識が増える。それの積み重ねでお客さんと充実したコミュニケーションが可能にもなる。そしてそこからアイデアも自ずと沸いてくる。あとはそれをどう表現するかだ。表現手法の提案があってはじめて説得力も出てくるというものだ。だから私は3D-CGもIllustratorも水彩画も使う。そのスキルは高ければ高いほどいいのは間違いないが、限られた時間のなかで、全部をナンバーワンを目指すのは無謀である。だがひとつだけに注力しすぎるのもよくない。それほどシビアに考える必要はないが、自分を斜め上方から眺めるようにバランスを取ることが肝要だ。

また、現状に満足して歩みを止めたらおしまいなので、いくつになっても学習とスキルアップは続けていく。

学習とスキルアップが楽しくて仕事をしているようなものである。





2025年3月6日木曜日

浦壮一郎著「サカナと水辺と森と希望」を読む

浦壮一郎著「サカナと水辺と森と希望」

これは今読んでいる、と言っても読み終わってもう一度おさらいしているというのが正確なところだが、その本の紹介。よい本だったので。



副題に「なぜ、魚はいなくなったのか」とあり出版社は「つり人社」、つまりどう見ても釣りが趣味の人に向けて書かれた本のように見える。それは正しいのだが、本書はそれだけにとどまらない、そしてそのとどまらない部分がとてもよかった。そもそも私は釣りはしない。小学生の頃ごはん粒を餌にフナを釣ったくらいしか釣りの経験はない。だから魚釣りと環境問題みたいなハナシばかりだったら正直イヤだななどと考えていた。ではどうしてこの本を読むことになったかといえば今仕事をしているクライアントが土石流などの水害対策の商品を扱っていて、カタログを作る際、今の治水を理解する上でこの本を読むことを薦めてくれたからだ。

構成は4章から成るが、1、2章では川魚、主にイワナやヤマメの生態とそれらが生育する環境について、そしてその環境の現在を問題点と解決にむけてを実例とともに丁寧に解説されている。

3、4章は川に治水を目的に作られたダムなどの構造物のもたらす影響とそれらが生態系へ大きな影響を与えていることと、主目的の治水上の効果へもおおいに疑問があることなどを検証している。

本全体を通して一貫しているのは、今までこの方法が良いと信じられてきたことがそうでもない、いやむしろ悪い影響を与えていることもある。というもので、これが非常に興味深かった。

魚が減ってきているので稚魚を放流しましょう→効果は限定的でかなり効率が悪くさらに悪影響を与えているものすらある。

ダムは魚にはかわいそうだが洪水を防ぐには有効→洪水抑制能力は考えられているよりかなり低く災害はむしろ増えている。

などなど

そして本書のよいところは、「だからやめるべき」といったアンチ宣言を声高に叫んで終わるのではなく、ではこれらに代わって、またはこれらに加えて。またはこれらをこういう風に改善して、と代替えや改良案がきちんと示されているところだ。しかもその内容が淡々と冷静にそして多角的に分析され理論的に述べられている点がよい。いろいろ事情があってすぐにできないものは段階的にこうした方が良いみたいな書き方をしているところもある。行政が推し進める国土強靱化にもいろいろ問題があって、まかせておけばいい、ではなく、みんなでそのこともっと考えて未来につなげましょうという内容になっている。それが本書のタイトルの「希望」の部分でもある。

また本書の後半で何度も紹介されている書籍「洪水と水害をとらえなおす」大熊孝著も気になったので購入し読んでみた。これもなかなか読み応えのある良書だが、学術的な記述も多く、すこしむずかしい部分もあった。内容を要約すると、近代以降のダムをはじめとする産業技術による治水には限界があり、日本中至る所で水害が発生し、その数も減っていない。洪水を完全に止める防災から洪水が発生しても人命や家屋などの被害を減らす防災への変換が必要、というものである。つまり「何が何でもあふれさせない」ではなく、「あふれても深刻な被害にならない」への変換である。だが行政はこういうのには前向きでないとも述べられている。それもうなずける。

ここからは話が変わるが、両書を読み読み思い出したことがある。防災とは関係ないが、以前バリアフリーが今のようになる前、つまりこれからいろいろやっていきましょうという時期に、産官学で情報発信を切り口に研究活動をおこなうワークショップがあった。私もなぜかそのメンバーに入り会議に参加した訳だが、国土交通省の役人、大学の教授、大手電機メーカーの人が集まり、会議はなかなか前に進まなかった。特に行政と学者の求めるものがなかなかかみ合わない。行政はもうすぐ始まるのだから2、3年のスパンで考えようとするのに対し、学者は来るべき未来にあるべき姿、と譲らない。だから具体論にさえなかなか入ることができず、電機メーカーも口の出しようがない、という状況だった。行政は現実主義、学者は理想主義などと言うつもりはまったくないし、事実そう単純ではない。ただしフィールドが異なると考え方が大きく異なるものだなぁ、と感じた。そこでちょっとひねったアイデアを出して両方まあ100%ではないにせよ賛同していただき、うまくまとめることができたのでよかったのだが、こういう行政と学者問題はおそらく至る所にあって、これらをうまく何らかのストリームにもっていくというのはある意味すごく重要なことかもしれないと感じたものだった。

治水に関しても、ダムに固執する役人が能なしで、学者が卓越した知見の持ち主という訳ではあるまい。この両書のように理論のみで流れを変えることはなかなか難しい。そこをどうすれば動かしていけるのか、そのテクニックは残念ながら学者の多くは持ち合わせていないようにも感じる。

ちなみに私は役所の人も学者も決してバカになどしていない。私なんかより何倍も優秀な人たちだった。そして人間的に好きだった。それこそ自分が働いていた会社の同僚や上司なんかより遙かにコミュニケーションが楽しかった。お役所の人は国土交通省の本庁のエリートですごく言葉遣いも丁寧で素敵な女性だったし、学者は本郷の教授で、それはそれはすごい人だった。その両方を私はとても尊敬して会議に臨んでいた。そしてそれは私にとってたいへん有意義な時間で学ぶことも多かったのである。

ここからはオマケだが、ちなみに本郷へは何度か足を運んで、そこでも会議に参加させてもらった。所属していた社団法人の理事長に頼まれて参加することになったのだが、最初の会議は今でも忘れない。私ともうひとり別の財団法人の人が呼ばれていて、そこで10分くらいそれぞれ所属する団体の活動について話すことになっていたのだが、私のほうは当日理事からちょっと本郷に行って10分くらい話してね、資料も何もいらないから、と言われたので、いいですよ、と軽く返事をして出かけた。本郷に着いて広い広いキャンパス内をテクテク歩いて会議室のあるビルに着くと、教授の助手がパワポのデータをセットしますのでください、なんて言う。えっ?いいえデータはありませんのでホワイトボードを使わせてください。ととっさに答えて席に着いた。持ち時間も30分と聞かされた。で会議の出席者がまたすごかった。大手自動車会社の研究員ばかりで、全員博士だった。これは名刺交換してわかったことだ。で、先に財団の人がパワポで慣れた様子で説明している間、私は何を話すか必死に考えた。それでここにいる人たちの専門でないおもしろいハナシをホワイトボードを使って30分間話をした。これはまあまあうまくいったと思っている。先の財団の説明では何人か寝ていたが私の時はみんなおきていて聞いてくれたからだ。まあ若い私がかわいそうで寝なかっただけかもしれないが。

私の話が終わって、席に戻ると携帯電話が鳴った。廊下に出て電話に出ると私に出席を依頼した理事だった。いつまでやってるの、新橋に飲みに行くよ、だって。こっちはたいへんだったんだよ、といって電話を切り、その後会議も終わって新橋に着くと、どっと疲れがでて、今日は私は飲み会費ナシだね、といって飲んだのを覚えている。久保田千寿が身体に染みた。




デスクまわりの「ちょい置き」について

 今日は久しぶりに電車で少し遠くまで行った。先日完成した遊園地アトラクションの模型の納品に奥多摩の少し手前まで。こんなところにオフィスがあるのだ。オフィスに着くと「遠くまでわざわざすみません」と挨拶されるような場所だ。でも空気は山の空気で気持ちが良い。深呼吸しながら歩いた。


奥多摩の山が近い



帰宅後いろいろ来ていたメールに返信してふと机のまわりをながめるとすごく散らかっている。やれやれ、忙しいのもあるが、こんなのダメである。反省を込めて写真を撮った。

まずはMacの作業机、3D-CGのレンダリング中に撮影しそしてこれを書いている。


Macの作業机


ここはそれほど散らかってない。でもスピーカーの上になぜか木工用ボンドが置いてある。

次はサイドデスク

サイドデスク


ここはひどい、打合せに持って行ったお茶のペットボトル、読みかけの本が2冊、色見本帳、スケッチ、レシートなどひどいことになっている。それぞれ理由はある、お茶は残ったのでもったいないので仕事しながら飲もうとここに置いた。本は今日電車で読むのに持って行ったので帰ってからお茶と一緒にカバンから出して置いた。色見本は模型の色確認でここ数日ちょこちょこ使ったので置いてある。レシートはヨドバシから届いたプリンターのトナーの領収書、トナーを下に入れてレシートはサイドデスクに仮置きしてそのままになっていた。スケッチは乾くまでここに置いておきスキャナーで読み込んだ。とそいういうことなのだが、言い訳してもダメなものダメ、やはりこの「ちょい置き」をどうにかしないと問題は解決しないように思う。

次に本棚

本棚


本棚の下はプリンターとアンプが置いてある。プリンターの上に図面が置いてある。先日相談を受けた一戸建ての図面である。確認は終わったのでスキャナーで取って処分しようと思っていたのだが取るヒマがなかったのでここに置きっぱなしになっている。やはりここでも問題はちょい置きである。

次に作業机


作業机


ここもきたない。今日郵便で届いた仕事関連の請求書、模型の材料や道具が置きっぱなしである。

最後に黒板


黒板



ここだけきれいさっぱりである。月初めなので一旦すべて消してキレイに拭き掃除して後で書き直す予定なので。右下には娘がいたずら書きしたふーちゃんがあり、これは消さなかった。

わかってはいるが「ちょい置き」をどうするかである。少し真面目に考えることにしよう。今思いつく解決策は2つ、「ちょい置き」そのものをやめるか、「ちょい置きスペース」を別につくるかである。そうすれば今のように机の上やサイドデスクなどは散らからない。他に方法あるかな?

で、まずは何はともあれ片付けることにした。幸い仕事は忙しいが3D-CGの仕事なのでレンダリング中はいろいろできる。


3D-CGムービーの計算中






サイドデスクの上のものもすべて片付けた


色見本帳をすぐに引き出しに戻さなかったのは引き出しの前に交換用のトナーが置いてあったからで、これを別の場所に移動し、引き出しの出し入れを邪魔するものがなくなった。

本棚



読みかけの本をすぐに棚に返せるように少しレイアウトを変更した。また絵はがきも2つだけにした。これで出し入れが楽になる。

作業机



さて、ここが問題だった。ここには「ちょい置きスペース」を作ることにした。方法はいまモニターの上に置いてある小物・雑物の入ったボックスを3つだけにする。ボックスはもともと8個置いてあったが、アクリルガッシュと梅ざらの入った3つをここから別の場所に移し、またここにないと不便なきわまりないもの以外はすべてここから別の場所に移動した。これが結構多かった。それで空いたスペースに「ちょい置きトレー」を2つ並べることにした。


製作中の「ちょい置きトレー」



3D-CGのレンダリングはいくつもあるので、計算をセットして工房へ行き作業し、戻ってデータをチェックして次を計算して・・・とそれのくり返しである。

なんとか2つトレーが完成した。

「ちょい置きトレー」



出し入れをしやすいように前面はオープンにした。材料はセリアという百均で売っている木材を使った。トレー1つの材料代はなんとたったの300円である。

これを先ほどの空いたスペースに入れて使いながら様子を見ることにした。

ちょい置きスペースができあがった




これで少しは良くなるはずだが、すべて解決とはいかないだろう。それでかまわない。またその時考えればいい。少しずつでも良くしていくことが大切で、そのための時間や労力を惜しまないことである。そう、よく「どうせまた散らかるんだから・・・」とか「どうせやらないんでしょうね・・・」とかそういうことを言う人は嫌いである。なぜ、そんな風に批判しないと気が済まないのだろう?。いいではないか無駄だったとしても、そのときまた考えればいいのだし、おもしろがって見ていればいいだけではないか。





2025年2月28日金曜日

遊園地アトラクションの模型製作

 模型製作の仕事、遊園地のアトラクション。ウェーブスインガーというアトラクション。昔からあるアトラクションで最初に造られてから50年以上経つ。日本語では回転ブランコと言うらしいがウェーブスインガーという名称で一般化されているのでそのほうがよく聞く。

ウェーブスインガー(Wikipediaのシェアフリー画像)




今回、外装デコレーションのプレゼンをどうしたらよいかとクライアントから相談があり、全周ぐるりと見せるなら模型がいいのでは、と回答した。CG動画やVRでも良いが模型の方がわかりやすい。ただしこちらとしてはこの時期非常に忙しく、この模型だけに多くの時間は割くことができない。また高精度な模型を造るには費用もかかる。
そこで今回はデコレーションのプレゼンに特化した模型を製作することにした。
したがって細部の作り込みや人の乗るブランコ部分も製作しない。

ウェーブスインガーは上下に伸び縮みする「軸柱」と搬器をぶら下げる「傘部」そして人が乗る「ブランコ」から成る。軸柱と傘部のジョイントは「球」となっている。まずは傘部と球を製作する。


傘部と球



球は本来アクリルやPETなどの球をAmazonや東急ハンズなので探すのだが、今回は時間がないので、中国製の安いLED電球100W形から球部分のみ切り出すことにした。素材としての球はAmazonに注文しても到着まで何日もかかるものがほとんど、東急ハンズにもあるかもしれないが買いに行く時間がない。そこで目を付けたのがLED電球である。これなら翌日には配達される。径もぴったりのようだ。
次に傘の部分。ここは発泡塩ビ版3ミリを使った。発泡塩ビは値段は高いが加工がとても楽なのでモックアップなどにはよく使う。
届いたLED電球から切り出した球を切り出すと材質はおそらくポリプロピレン、つまり接着剤が効かない。そこで接続部分は2液型のエポキシ接着剤を表裏をつなぐブリッジとして用いて発泡塩ビ板に固定した。接着剤の効かないポリプロピレンを接着剤のクランプで挟み込むようにして留める。古い人にはリベットのように使うと言った方がわかりやすいかもしれない。

PP(ポリプロピレン)の留め



次に傘のベース部分にフレーム取付用のマーキングをした。
そしてフレームづくり。ここも発泡塩ビ。今回はほとんどの部分を発泡塩ビで製作することにした。展示会用のしっかりした模型の場合、発泡塩ビは使うことができない。柔らかいので爪で押しただけで跡がつく。だが今回はプレゼン用である。製作しやすさを最優先とした。発泡塩ビの長所はカッターで楽に切ることができ加工が早く、アロンアルファで強力に接着できるので組立てが早いこと。また力をかけても曲がるが割れにくい。反面、短所は前述のように柔らかいので強度がなくキズになりやすいこと。そして材料の値段が高いことだろうか。同じ厚みで比べてもアクリル板の方が安い。

フレーム(これが傘の骨にあたる部分となる)



さてこのフレームだが、形状が直線ではないので電動糸ノコ盤を使って5ミリの発泡塩ビを4枚ほど重ねてカットすることにした。
カットしたフレームを傘のベースに接着する。接着剤はアロンアルファを多用した。今回の模型製作でアロンアルファを4本ほど使った。ただし力がかかる部分はアロンアルファで接着後エポキシ接着剤を盛って強化した。

フレーム取付



フレームにはパネル取付用の受け材を取り付けた。16本のフレームづくりに半日かかった。ちなみに作業は他の仕事の合間合間だったのでトータルでどの程度時間がかかったかは定かではない。おそらく延べ工数で丸3日と少しくらいだろう。アロンアルファ接着後は連続して作業できるがエポキシ接着剤を使った場合固化するのに12時間程度かかるので、その間は他の部分を作るかまたは別の仕事をすることになる。また、今回の模型は図学的に各部の板取り図を計算するのがとても大変だった。
フレームにエポキシ接着剤を塗布しこれが固化するまでの間に屋根を作った。

屋根(フレームを付けたベースに置いて合わせてみたところ)



この屋根も反りがあるので板取り図を作るのが大変だった部分。屋根の頂部はポリエチレン樹脂の半球から切り出したドームを取り付けた。このポリエチレン球体はたまたま家にあったもの。

さて、次は軸柱の製作、ここも発泡塩ビを筒状に巻いて製作した。実はこういうプラスチックの素材を円筒に加工するのはなかなかうまくいかない。キレイな円筒にはまずならない。だから通常はパイプ材などをカットして使うことが多い。だが今回は前述のように材料を探す時間も手配する時間もないので仕方がなく巻くことにした。
軸柱ができたところで全体を仮組みして図面と照らし合わせチェックする。

塗装前の仮組み



次はいよいよ塗装である。ただしオーナメント部分は紙にプリントしたものを貼り付ける予定なので単色部分のみの塗装である。まずは紙を貼る部分も含め全体にサフをかける。今回はホワイトのサフ。サフの次はマスキング、これにだいたい1時間くらいかかった。マスキングが終わったのでエアブラシで塗装を始める。ラッカー塗料なので寒いが換気しながらの作業である。

エアブラシ



ウチのエアブラシはコンプレッサーが非力で大面積を一気に吹くのは苦手である。もう少し模型の仕事が増えればコンプレッサーは買い換えたいところ。2〜3倍くらいパワーが欲しい。ま、そのうち。

塗装はラッカーなのでエアブラシで吹いた後すぐに乾く。安全を見ても1時間もみれば十分。塗装の次は厚紙にレーザープリンターでプリントしたオーナメントを貼り付ける。受注金額と製作期間が10倍くらいあれば3Dプリンターでオーナメントは作りたいなどと考えながら今回はプリントをスプレーノリで貼り付けていく。

オーナメントの貼り付け作業中



ドイツのメーカーから送られてきたいい加減な画像やクライアントから送られてきた泣きたくなるような参考写真を元に一手間も二手間もかけて見られるものに変えていく。このグラフィックの編集作業にすごく時間がかかった。ただしこれは毎回同じなので想定内ではある。

すべて貼り終わり、ベースをつけて完成である。
完成模型