ポップアートといえば誰でも知っているのがウォーホールとリキテンスタインだろう。美術に興味のない人でも名前くらいは聞いたことがあるはずだ。
モダンアートがその発生から辿ってきた道筋の延長線の、終点1つ前とも言える偶発生を主題にしたアート、そう、デクーニングやポロックのことを言っている、広義にはヨーロッパにおけるこうしたムーヴメントの引き金でもあったデビュッフェ(ベルナールビュッフェではない)らによるアンフォルメルも終点2つ前として考慮すべきであろう一連のアート。
ちなみに終着駅はラウシェンバーグの消されたデクーニングのドローイングだ。音楽におけるケージの4’33の美術版だ。
デビュッフェやポロックらの作品が持つ、ストイックなそしてアカデミックな姿勢に対するアンチテーゼとして戦後ヨーロッパで、そして60年代以降主にアメリカで大きく発展した芸術形態。それがポップアートだった。
だが、よく勘違いされていてWikipediaでもその解説が微妙なのだが、ポップアートというのは一般に、大衆的な題材を扱ったポップでキッチュなアートという風にとらえられている。それは間違いではないのだが、実はそう簡単なものでもない。
ポップでキッチュ、わかりやすく言うと「大衆的でくだらない取るに足りないもの」という意味だ。つまり関西お笑い芸人みたいなものだと言えよう。
だが、ウォーホルにしてもリキテンスタインにしても、その作品を見ると一定の気品が担保されており、下品さは微塵もない。もちろん全てとは言わないが。
だが、ポップアートは確かにポップでキッチュな題材を扱っている。マリリンモンローや毛沢東のありふれた(つまり誰もが知っている新聞に出ているような写真)、キャンベル、コカコーラ、新聞のアメコミ欄など、すべてポップでキッチュな材料だ。
つまり、題材はポップでキッチュだが表現方法はポップでもキッチュではないということだ。
表現方法がポップなら、テレビや雑誌を使うだろうし、キッチュでないことは前述の通りだ。
そして、このポップでキッチュな材料、題材をポップでもキッチュでもない手法でアート化したのがポップアートなら、その手法は一体何だったのか、それをもっと掘り下げて論じることがポップアートの正しい理解につながるのではなかろうか。
残念ながらポップアートは比較的短命で、アカデミック路線の逆襲とも言えるクリフトらのミニマルアートやらアースアートらに取って代わられ、サブカル系はつまらないヒッピー文化に取って代わられてしまったので。
だが、もちろんポップアートの作品価値が下がったわけではない。現美にあるリキテンスタインのヘアリボンの少女は6億円で購入し、一部から「漫画に6億!」などと揶揄されておったが、今ではその10倍以上の値がつく現代美術を代表する作品の1つと認められている。バンクシーのアートに1億払うような愚行とは訳が違うのだ。
で、そんなこと考えながら作ってみた作品。
ポップアートの表現手法の考察。
ただしこの手のアートにとって大変重要な要素があることを、この作品を作りながら学んだ。
モデルは相当レベルが高いことが要求されると言うことだ。試しに他のモデルの写真で試してもみたが、全くダメだった。このモデルは容姿は完璧だった。こうでないとダメなのだ。
つまり、モンローも毛沢東もキャンベルもコカコーラも同じだ。
もちろんモンローや毛沢東がすばらしい人たちという意味ではない。イコンとしての資質を持っているという意味だ。
だからアンジョリーナジョリーやキンペー、クノールやペプシでは成り立たない。
関西お笑いほど醜くはなくとも、かなり滑稽なものになる可能性が高い。
だから友人やガールフレンドにポップアートの題材になってもらおう、などとは考えない方がよい、相手を怒らせてしまうか、ひょっとしたら泣きだしてしまうかもしれないから。つまり顔を3階調程度の真っ黄色に塗り潰しても、吹き出してしまうような画像にならないことが求められるということ。
では、そろそろイメージの制作プロセスに移ろう。
まずは元になる写真の標準的な現像の写真。
色温度と若干の露出補正のみ、ごく普通のポートレート写真だ。
今回は色温度を意図的に変更し下のようにした。併せてコントラストなども微調整し、意図的に階調を下げた。
また、合成用にモノクロの画像も用意した。この白黒画像も意図的に階調を落とし、かつ肌の部分に階調があまり出ないよう、カラー写真のRチャンネルだけを白黒画像に変換している。
これを、さらにポスタリゼーションで階調を少なくし、下のようなイメージとした。
最後にトーンカーブで微調整を行った。
これを先の意図的に色温度を変更したカラー画像の1つ上のレイヤーにコピーし、レイヤ合成モードを比較明で不透明度をバランスを見ながら調整した。
次に服部分が緑色に変わってしまったので、服のみを選択し、調整レイヤで色補正をかけた。
最後にいろいろ微調整し完成。
作業時間は試行錯誤を含めて20分程度。あらかじめ方向が決まっているので、どうしようか、という悩みはない。
単に求める方向に向け調整をしていくだけなのであまり時間はかからない。
Photoshopでは持って行く画像の方向をあらかじめ持って作業するがとても重要だ。
素人は、とりあえずファイルを開き、フィルターやらスライダーやらをやみくもに変更したり、レイヤをコピーして階調反転して合成モードをあれこれ変えたりなどと、おもしろい絵ができないかなー、とやりたがるが、これはダメである。
たまたまうまくいくこともあるだろうが、再現性がなく、スキルが身につかないからだ。
完成







