2021年4月17日土曜日

シグマDP2メリルでポートレート

 シグマはフォビオンセンサーの開発に関して基礎研究からやり直すようなことを言っている。これは私の予想だが、事実上やめてしまったと思っている。

そうなるとちょっと残念な気がする。

 

今どきDP2mをどれだけの人が使っているかは怪しいし、欠点も多いが、独特の味があって面白いカメラだったので書いておこうと思った。

シグマDP2メリルはシグマが今から10年くらい前に発売したコンパクトカメラで、フォビオンというの撮影素子を使ったフォビオン3代目のシリーズの商品だった。

DP2メリルでの撮影と撮影データの現像は本当に辛かった。何が辛かったかと言えば、何もかもだ。しかしそれは仕事用ではあり得ないが、趣味なら十分アリだった。

まずこのカメラで撮影したRAWデータはAdobe Camera RAWなどの汎用ソフトでは現像できない。SIgma Photo Proというシグマ提供のソフトを使うしかない。私の使い方は、最低限の作業のみを大雑把に仕上げて、さっさとPhotoshopに引き渡すとういうものだった。
シビアな追い込みをしようにもホワイトバランスすら効率的に調整できなかったからだ。そしてレスポンスが悪い、プレビューが信じられないくらい遅い。なのでホワイトバランスも「だいたい」、露出補正も「だいたい」、でおわり。

それならいっそJPEGでいいのでは、と言われそうだが、これがそうはいかない。
ということで、さっそくはじめてみよう。

まずはそのJPEGから見ていこう。





ずいぶんいい加減なホワイトバランスで撮影したもんだな、と思われるだろうが、人工照明でLEDや蛍光灯を使うと、たとえカスタムホワイトバランス設定をしても使い物にならなかった。肌の一部が黄色に変色し始めるのだ。そしてこの黄色はRAW現像では修正できず、Photoshopでの修正も時間がかかった。なので撮影時はこのくらいで手を打つしかないのだ。

この画像をフォトショップのカラーフィルターで補正する。今ならCameraRAWフィルターだろう。
その結果がこれ。





色合いは正常に近づいたが、どうも色のりが良くない。保健室に行った方がよい顔色だ。

そこでさらに補正をかける。





うーん、まだまだ顔色が悪い。だが肩や右腕が黄色くなってきた。これ以上はだめだ。黄色の変色を無視したとしてもどうも色が悪い。
これがカメラ生成のJPEGが使えない理由だ。

で、RAW現像することになる。
それなら同時記録のJPEGは不要では、と思われるかもしれない。

そんなことはない。Sigma Photo Pro君をなるべく使わずに、構図、表情、ピントをチェックしてダメな写真をハネるのにJPEGはすごく役立つからだ。

だがこの作業、先ほどの色が転んだJPEGを見ながらで結構辛い。
もうこのへんで普通なら「シンドバッド7回目の後悔」だ。でもめげずに続ける。

終わったらSigma Photo Pro君でRAWを現像する。
Sigma Photo Proでの作業は、色温度を「だいたい」合わせ、露出補正を「だいたい」行う、それでおしまい。
まがいなりにもRAW現像である、シビアに追い込みたくなるのが人情だが、先にも書いたとおりやめたほうがよい。
絶対にうまくいかない。
で、「だいたい」で書き出したTIFF画像がこれ。





次にこのTIFF画像をPhotoshopで開き、レンズフィルターなどでホワイトバランスの再度調整を行い、レベル補正で同様に露出の調整をする。必要に応じてトーンカーブも微調整する。今ならCamera RAW フィルターを使っても良いだろう。黄色の変色がひどいなど、うまくいかないときはSigma Photo Proに戻り、そのうまくいかないのを考慮した方向に少し設定を変えて再びTIFFに書き出しPhotoshopへ。だいたい3往復くらいで何とかなる。
専門的なことはわからないが、おそらくフォビオンは汎用のRAW現像ソフトが対応しないのや、新しいセンサーの開発がうまくいかないのは原理上センサーからの情報が頼りなく、有用な情報を取り出す処理がたいへんむずかしいということではないだろうか。

さて、Photoshopでうまくいったら、色深度を16BITから8BITにして、最後にこまかなゴミ取りや部分的な色かぶりなどを丁寧に補正し、PSDファイルで保存して基本現像作業完了となる。





 

一見してわかるとおりJPEGの補正画像と比較すると雲泥の差だ。





こうして苦労して撮影し、現像した写真の中に、ときどき、なんとも他のカメラとは異なる渋い絵を見つけることがある。
散々悪口を書いたが、一度それを手に入れてしまうと全部許せてしまうのだ。
そしてそんな不思議なカメラはこれ以外に知らない。

今回は説明の作業プロセスを説明しやすい写真を作例に選んだが、例えば





これなどは独特に色合いと材質感が出た写真だと思う。この無機質感が好きだった。

単にPhotoshopで彩度調整してもこうはならない。
ちなみにシグマのソフトはこのPhoto Pro君の他にPhotoshopプラグインもある。こちらはPhoto Pro君で設定が完了した、または設定をしないですむファイルをダイレクトに開くためのプラグインだ。Photo Proで最後に書き出すひと手間を惜しむためとは思えないので、晴天時の風景写真なら直接Photoshopで読み込んで調整、でなんとかなりますよ、イライラしないで済みますよ、ということだったと思う。

 

最後にDP2メリルのポートレートは白黒を前提に撮影する場合は、カラーとは違ってストレスは大分少なく、しかもいい味だった。

私はカラーにこだわったが、時々撮っていた白黒写真が苦労知らずでいい絵が得られ、何度カラー写真にくじけそうになったことか。





白黒でも独特の材質感があり、私の好みにぴったり合った。

 

最後に、私はポートレート写真を撮るとき、極力表情をなくし物のように無機的に撮るのが好きだった。歯をみせて微笑んでいる写真は1%未満だ。今回はわかりやすさでこれにした。

逆に物のように、悪い言い方をすればマネキンや人形のように撮るのが好きだ。その理由はいつか改めてここで紹介するが、こういうこだわりを持った撮影の場合、RAW現像やPhotoshopでの調整の方向が明快となる。撮影の時にあまり考えずに、現像の時どうしようかな、ああかな、こうかな、とやっていると私の経験では大抵つまらない写真となる。

モデルをあまりジロジロ眺めるのは失礼だが、ちゃんと見て撮り方を考えるのが大切だと思う。

 

昨今流行の「ボケ」とか「空気感」などもあまりこだわると、いつも同じような写真ばかりになってしまう。




2022年5月19日追記

さて、その後Mac StudioのM1 ultra版を導入し使い始めた。miniとは比べものにならないくらい速い。3Dのレンダリングは4.5倍高速になった。Photoshopの時間がかかる強化フィルターは10倍以上速くなった。


これならダメダメなSigma Photo Proもなんとか使えるのではないか、と最新版をインストールして使ってみた。

結論から言うと、結果はガッカリだったのだが一応処理時間の比較を書いておく。


テストその1

デスクトップのファイルをクリックしアプリを起動しファイルを開く

Miniが4秒93、Studioが9秒11となぜかStudioは倍以上遅い。プログラムの起動が遅いのが原因だ。


テストその2

モードをカラーからモノクローム(白黒)に変換

Miniが4秒69、Studioが2秒82とここではStudioが2倍くらい速い


テストその3

ホワイトバランスの変更

Miniが8秒86、Studioが7秒22とあまり差がない


テストその4

調整モードの変更

Miniが8秒03、Studioが6秒83とこれもあまり差がない


テストその5

TIFFで書き出し

Miniが2秒46、Studioが2秒64とほぼ同じ


テストに使った画像はこれ




つまり他のソフトでは4倍から10倍も高速化のStudioだが、Sigmaではほとんど速くなっていない。まあ微妙には速くなっているが、軽自動車からスポーツカーに乗り換えて最高速度が1割アップといった感じ。納得がいかない、と言う意味だ。

これはね、どう考えてもプログラムがおかしい。私の経験から想像するに、仕様と費用だけで外部発注したようなソフトの出来で、内部にプログラムに詳しい人が誰もおらず、それでもスピードが遅いのは誰でもわかるので、なんとかできないかとソフト会社に問い合わせすると、仕様通りですよ、スピードアップするにはシングルコア対応からマルチコア対応に変えるため、コードからやり直しで、費用が3倍くらいかかって全部やり直しですよ、といわれて「くしゅん」。

というパターン。


というわけで、使い方は今まで通りだね。