今回は続編としてもう少しレンズのことを説明しよう。
まずは前回のおさらい。焦点距離はレンズの倍率を表し、数字が大きいほど倍率が高い。24から35mmを広角、50mmあたりを標準、80mm以上を望遠と呼ぶ。
広角レンズで近くから撮った写真は望遠で遠くから撮った写真と同じくらいの大きさになるが、背景が大きく異なる。
絞りは絞るほど被写界深度が深くなる。逆に明るいf値のレンズで絞りを開放(一番開く)にすると被写界深度はとても浅くなる。
さらに、上記の特徴を踏まえ、撮影して試してみることをおすすめした。
残念ながら、春の花のシーズンは終わってしまったので公園に行ってもアジサイくらいしか咲いていないが、アジサイでも違いを十分実感できるはずだ。
また、フルサイズセンサーを基準にすると、APSCで1.5倍、フォーサーズでは2倍の焦点距離と同じくらいの倍率になることも説明した。
レンズは同じ焦点距離でも値段にずいぶん差がある。大きな理由の1つは明るさ、つまり解放f値が小さいレンズほど値段が高いが、それだけでなく、以下の性能によっても値段が変わってくる。
1.写真がすみずみまでシャープに写るかどうか(解像度)
2.写真がゆがんでいないか(変形)
3.写真の四隅が暗くなっていないか(周辺光量落ち)
4.逆光で不自然な光が写り込まないか
5.ボケの品質
などなど、さらに操作のしやすさ、レンズの重さ、外装の質感なども評価の対象となる。
そしてこれらの多くで高いポイントのレンズは非常に高価なものになる。
もちろん、性能の良い高価なレンズを使えば、それでイイ写真が撮れる、と言うわけではない。
たとえて言うなら、同じ材料を使って料理しても、
最高のコックが、安い道具で料理したものと
下手なコックが、最高の道具で料理したもの、とどちらがイイですか、と言うことになる。答えるまでもない。
なので、レビューや評価記事などを読んで、その気にならないことだ。つまり、このレンズを買ったらイイ写真が撮れるかもしれない、などと考えないことだ。
さて、本題に移ろう。
今日は最短撮影距離とボケについて簡単に説明する。どちらもある程度は気にする必要があるからだ。
最短撮影距離というのは、どこまで近づいてピントが合うか、のことだ。
例えば最短撮影距離が50cmであれば、50cm以上近づいたらピントが合わない。つまりそれ以上近づくことによって大きく撮りたくてもできない、ということになる。
実際の撮影では、例えばひまわりは画面いっぱいに撮ることができても、小さなスミレでは画面いっぱいができない、といったことがおきる。
50cmと言われてもピンとこないだろう。まずは手持ちのレンズで、小さな物がどのくらい大きく撮影できるか、例えば500円玉などを使って確かめてみるとよいだろう。
通常、望遠レンズは最短撮影距離が長く、広角は短い。だが広角はもともと広く小さく写るレンズなので、近づけてもあまり大きくならない。なので望遠で遠くから撮影した方が良い場合も多い。
また望遠の撮影では前回説明したように画角が狭いため背景の写る範囲が狭い。狭いということは少しカメラの位置が変わるだけで背景が大きく変化する。つまり背景をコントロールしやすいということだ。
さらに望遠は広角に比べて被写界深度が浅いので背景がボケやすい。
ごちゃごちゃした背景を避け、静かな背景をボカすことで花が浮き上がって見える。簡単にそこそこ雰囲気のある写真を撮ることができる。
例えば花を撮る時など、普通は写す花を良い角度で、と考えがちだ。だが、花そのものより背景に気を配った方がいい写真が撮れることも少なくない。
キットレンズでは開放f値はそれほど明るくないが、望遠で少し離れた所を背景にして開放で撮ればそれなりにボケてくれるので、ぜひ試してみてほしい。
できれば広角や標準レンズで撮影したものと比べてみるとその違いがはっきりするのでおすすめだ。
くどいようだが、非常に簡単に、かなりいい写真が撮れるようになる。
大切なことなので、ポイントをもう1度書こう。
花を撮る時、
1.望遠レンズを使う。
2.その花がよく見える角度より、いい背景になる角度を選ぶ。
3.絞り開放で背景をぼかす。
さらに言うと、カメラを持って立って人間の目線で花を見ると、通常は見下ろしになる。すると背景はあまり期待できない。
4.カメラを持って少ししゃがんで、液晶モニターをチルトして見る。
すると花をヨコから見ることができ、背景は少し離れた木々の緑などが選べる。距離もあるのでボケやすい。ごちゃごちゃしていないイイ雰囲気の背景を選ぶことができる。
これだけで素人とは思えない写真が撮れる。
あじさいなどでは花が大きいので、花のどこにピントを合わせるか、被写界深度を浅くするか、すこしだけ深くして背景はボケても花は全体にピントを合わせるか、など選択肢も多い。
これも簡単だ。あれこれ悩まずに、絞りを少しづつ変えて撮ってみればよい。
それを家に帰ってパソコンのモニターでチェックすれば、実に楽しいこと請け合いだ。
上の写真は、花の写真2回目のウチの娘がオリンパス入門機のダブルズームキットで撮った写真。
望遠使って解放でヨコから撮ってごらん、背景だけ気にしてね。
アドバイスはそれだけ。
アングルとピントは今ひとつだが、安いダブルズームレンズキットのカメラでもこのくらいは超簡単という例、そして世の高級カメラ志向おじさんたちはこんな写真ですら撮れない人が多い。何人も知っている。
さて、次にボケについてだが、昨今日本語の「ボケ」は英語にもなり、ボケブームとなっている。そして、いろいろなところで、このレンズはボケが「美しい」だの「うるさい」だの「かたい」だのと賑やかだ。だが気にする必要は全くない。こういうオタクっぽいことにこだわると、どんどん新しいレンズが欲しくなり、写真の腕はさっぱりなのにレンズだけはいくつも持っている、なんてことになる。
もちろん、レンズを買ってはいけない、とは言わない。だが、はじめに買ったダブルズームキットの安いキットレンズでもちゃんと良い写真は撮れるから、まずはそれらをすり減るくらい使って撮影することだ。ボケの質は背景がごちゃごちゃしていなければ、キットレンズでも全く問題ない。
さらに、いつもボケ、ボケ、ボケではなく、被写界深度を深くしてあえてぼかさない写真も撮ることだ。そのボケていない写真の向こうにこそ、次のチャレンジが待っている、とも言えるからだ。
